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「346分の97」が絶滅危惧種! 地球から海鳥が消えていく

「トキの失敗」から探る復活への道

尖閣諸島に暮らすアホウドリ

一度は“絶滅宣言”が出された野生動物を、人の手で復活する──。それは、たった一行で記されるほどには容易でない取り組みだ。

1947年にいったん“絶滅”とされたのちに、幸いにも「再発見」され、再生を果たしたアホウドリ。伊豆・鳥島を中心に、42年間にわたって保護・繁殖活動に取り組み続けた長谷川博・東邦大学名誉教授(70歳)らの努力によって、わずか10羽から数千羽へと回復したその復活劇については、前回ご紹介したとおりである。

いまや、新たな集団繁殖地(コロニー)として、小笠原諸島・聟島(むこじま)でも、新たなヒナが育つまでになっている。

そして、アホウドリのコロニーは、鳥島と聟島のほかに、じつは尖閣諸島にも存在する。尖閣諸島のアホウドリも、かつて絶滅したとされていたが、1971年に12羽が“再発見”され、その後も増加していることが確認されている。

【写真】尖閣諸島 航空写真
  じつはアホウドリのコロニーがある尖閣諸島 photo by gettyimages

長谷川さんは、マスメディアのヘリコプターに同乗し、ときに上陸したり、あるいは上空から観察したりしながら、尖閣諸島のアホウドリについても調査を行ってきた。

2002年2月には、同諸島における生息状況を調査し、北小島で1羽、南小島で32羽のヒナが育っていることを確認している。これまでのデータから、アホウドリの繁殖成功率は60%程度と見積もられている。33羽のヒナから逆算して(33÷0.6)、繁殖つがい数は55羽ほどと推測された。

同時に、成鳥と若鳥も計81羽が確認された。鳥島での経験から、総個体数は観察された成鳥と若鳥の約3倍と考えられた。

それらの数値から、2002年時点での尖閣諸島における総個体数は、約250羽と推測される。同諸島の帰属問題が再燃し、日本国政府が2004年以降は上陸を禁止したため、研究者も現地調査に入れなくなった。反面、人間の影響を受けなくなったため、生息数は順調に増加しているという。

鳥島モデルを尖閣諸島にあてはめて、年に10%ほどの増加率と想定すると、同諸島の総個体数は現在、約1000羽になっている、と長谷川さんは推測する。

鳥島生まれの若鳥たちが繁殖地を拡大

新たなコロニー形成が期待されるところもある。

ミッドウェー環礁のイースタン島で、デコイ(実物大模型)と音声装置を置き、鳥島の新コロニーと同じような誘引作戦が2000年から実施された。

鳥島で巣立ったオスとメスがつがいとなって産卵し、2011年1月にはヒナが誕生している。このつがいは、その後も産卵を続けている。

また、ミッドウェー環礁の西北西にあるクレ環礁では、個体識別用の足環から鳥島生まれと判明したメス同士がつがいとなり、2個を産卵した。ただし、いずれも無精卵だった。いずれオスが同環礁を訪れれば、オスとメスのつがいができ、ヒナが誕生する可能性がある。

【写真】飛翔するアホウドリ
  飛翔するアホウドリ。鳥島生まれの彼ら自身が、生息地を拡大しつつある(写真提供:長谷川博さん)

長谷川さんは、鳥島で集めたデータから見えてくる将来予測や、北太平洋に繁殖地が広がろうとしている状況に満足し、2018年12月、世界的にも例を見ない、個人による125回もの無人島調査に区切りをつけた。

「悔いはまったくない。やり切った。僕も70歳。体力的にも限界だ。蓄積したデータをもとに、今後は論文や本を書きたい。鳥島では8年後、総個体数が1万羽に到達すると思うので、そうなったらクルーズ船でそのようすを見に来るよ」

同年12月16日に最後の調査から八丈島に帰った長谷川さんに電話をすると、明るい声でそう語った。