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# 日本経済

「統計不正」問題の端緒は、1960年代までさかのぼれば見えてくる

そこで、大幅な人員削減が…

信頼の早期回復を誓ったが…

違法な手法での調査が明らかになった毎月勤労統計に端を発し、国の統計全体が信頼失墜の危機に瀕している。

先週月曜日、安倍晋三総理は第198通常国会の施政方針演説で陳謝し、信頼の早期回復を誓ったが、その言葉に反して、毎月勤労統計問題を調べた第3者委員会の報告がお手盛りだったこと、賃金構造基本統計、小売物価統計など別の基幹統計でもデタラメが存在したことが、次々と明らかになったのだ。

国民の不信は世論調査でも露わになっている。先週月曜日(1月28日)公表の読売新聞の調査では、厚生労働省の毎月勤労統計の調査手法が不適切だった問題で組織的な隠ぺいはなかったとの説明に「納得できない」と答えた人が全体の85%、この問題が省庁の信頼性に「影響する」と考えている人が80%に達したという。

一連の騒ぎを整理したうえで、なぜ、こうした問題が起きるのか、どうすれば統計の信頼性を確立して政府が策定する政策の効果・精度を向上させることができるのか考えてみよう。

 

信頼回復策としては論外

まず、毎月勤労統計問題の経緯だ。昨年12月28日の報道で問題が発覚、年明け1月8日の記者会見で根本匠厚生労働大臣が事実と認めた。その3日後の1月11日には、違法な調査の影響で、雇用・労災保険で正当な給付を受けられなかった人が延べ1973万人、その過少支給が537億円に達した、と厚生労働省が発表。同省は1月16日、第3者委員会と位置付ける特別監察委員会を設置し、事態の調査に乗り出した。

特別監察委員会はわずか7日後の1月22日、「組織的隠ぺいは認められない」などとする検証報告を公表。これを受けて、根本大臣は自らを含む合計22人の職員処分を発表し、事件の幕引きを試みた。

この間の1月18日、厚労省は、精査したところ、のべ2015万人の給付が不足しており、是正のための事務費195億円を含めて総額795億円が必要になったと是正。政府は、このうちの6億円あまりを来年度の一般会計の歳出に上乗せするため、政府予算案の閣議決定をやり直すという前代未聞の事態も起きた。

ところが、政府・厚労省の思惑通りの幕引きはできなかった。22人の処分から2日後(1月24日)の衆参両院の厚労委員会の閉会中審査で、厚労省職員が特別監察委員会のヒアリングの一部を肩代わりしたり、報告書の原案を作っていたことが発覚、特別監察委員会の第3者委員会としての独立性・中立性に疑問符が付いたのだ。

同じ日、総務省が基幹統計の4割に当たる22統計で誤りがあったと公表し、統計全体に対する信頼も揺らぎ始めた。

根本厚労大臣は1月25日、特別監察委員会の再調査を表明し、その調査は継続中となっている。案の定、ヒアリング問題は氷山の一角で、ヒアリングの一部で厚労省の審議官や官房長といった最高幹部が同席したことも明るみに出た。

さらに1月29日には、部局長級、課室長級の計20人の幹部職員のうち8人のヒアリングには特別監査委員会のメンバーがおらず、厚労省の事務方職員だけで行っていた事実まで露呈。結局のところ、違法行為や隠ぺい工作の有無、関与を追及すべきヒアリングが、情実の余地いっぱいの身内の調査だったことが判明したのだ。

こうした経緯を踏まえれば、根本大臣が実施を約したヒアリングのやり直しは信頼回復策として論外だ。お手盛り報告の取りまとめを容認するような人物たちは特別監察委員会の委員に不適格であり、まず委員の人選からやり直すのが筋である。そのうえで、1月22日の報告書では解明されたと言えない3つの疑問の解明に尽くす必要がある。