統計不正問題「官僚叩き」よりも先にやるべき抜本的解決策を示そう

厚労省に任せてはおけない

本質的な原因はすぐに分かった

本コラムでも2週間前に取り上げた(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59499)が、やはり統計不正のことが今国会の最大の問題になっている。2週間ほど前には「不適切な調査」という報道であったが、最近の報道では「統計不正」というようになった。当然である。

データは「21世紀の石油」といわれる。データ流通のためにはその品質が重要だが、国家統計はそのなかでも最高のものとされている。

日本では「統計法」が定められており、基幹統計として公的統計の根幹をなす「重要性の高い統計」を56個指定している。基幹統計では、統計調査を受ける国民にも、統計報告を拒んだり虚偽の報告をしたりすると罰則がかかる。

もちろん、基幹統計に従事する公務員にも真実に反する行為や機密漏洩を行った場合には罰則がある。だからこそ、国家統計は高い品質を誇るのだ。

 

筆者は、大学時代に数学を専攻していた。大学卒業後は大蔵省に入省したが、文部省統計数理研究所での内々定ももらっていたくらいなので、一応統計の専門家である。その目からみると、今回の「統計不正」は、国の統計職員の人員・予算不足、各省庁ごとの縦割り文化に本質的な原因がある、とすぐにわかった。

また、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」が不正な手法で行われていたとも報道されたが、これも筆者の予想通り、現場の人員予算不足を激しく想起させるものであった。

「賃金構造基本統計調査」では、マニュアルでは事業所に直接調査の担当者が出向いて調査することになっていたが、実際にはほぼすべて郵送で行われていたという。たしかに、それは明らかなマニュアル違反であり、そのこと自体は不味いことだ。しかし、統計的な観点から言えば、両者に統計誤差はあまりないだろう。慢性的な人員・予算不足から、直接訪問での調査は難しく、やむを得ず郵送で対応せざるを得なかったのだろう、という気がする。

もともと、本件は「毎月勤労統計」において、東京都の一部事業者について全数調査するところを「一部抽出調査で行っていた」のが不正であるということだが、統計技術的には全数調査でも一部抽出でも誤差率は大差ない。つまり、結果には大差はないのだが、適正なルールの変更手続きを隠れて行ったことが問題である。繰り返しになるが、筆者はこの問題は、統計調査・作成を担当する人員と予算に不足が原因だろうと考えている。

世は「ビッグデータの時代」なので、海外では、官公庁も民間企業も、ともに統計専門家は高給取りになっている。しかし、日本政府では、統計専門家は主にノンキャリアで、出世しない地味なポストだ。しかも最近は人員・予算不足、縦割り組織の弊害が甚だしく、満足な仕事が出来ない。この現状を認識し対策を打たなければ、「統計不正を行った官僚が悪い」と非難しても、再発防止にはまったくならない。

そこで、筆者は抜本的な解決策として、人員・予算の拡充、統計庁のような横断的な組織の創設を2週間前の本コラムに書いた。

しかしこの2週間、マスコミでは人員・予算不足、省庁ごとの縦割りの弊害はほとんど報じなかった。そのうえ、厚労省の事後対応の不味さが相次ぎ見られたので、その不手際を指摘する報道があふれた。このままでは、統計不正の根本を改善する方向に向かうのではなく、官僚バッシング、政権バッシングに終始することになりそうだ。