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# 日本経済

衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた

アベノミクスとはなんだったのか…
毎月勤労統計の不正が発覚したことによって、日本の賃金上昇率がかさ上げされていたことが明らかになり、国会が紛糾している。野党は「アベノミクス偽装」だと言うが、じつは問題の本質はそんなところにあるのではない。独自試算をしてみると、日本人の賃金がすでに「大不況期並み」になっていることが明らかになったんです――そう指摘するトップ・アナリストで、『日本の国難』の著者・中原圭介氏による緊急レポート!

野党の言う「アベノミクス偽装」は本当か?

厚労省の一連の不正統計において、とりわけ野党が問題視しているのは、2018年1月から「毎月勤労統計」の数値補正を秘かに行っていたということです。

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たしかに、2018年からの補正によって賃金上昇率がプラスにかさ上げされていたのは紛れもない事実であり、厚労省が集計しなおした2018年の実質賃金はマイナス圏に沈む結果となったので、野党が「アベノミクスは偽装だ」と追及するのは間違いではないといえるでしょう。

しかし私は、野党が2018年の実質賃金だけを取り上げて、「アベノミクスは偽装だ」というのは、大きくポイントがずれているし、国民をミスリードしてしまうと考えております。

 

というのも、2018年だけの実質賃金を取り上げるよりもずっと重要なのは、アベノミクス以降の実質賃金、すなわち2013年以降の実質賃金がどのように推移してきたかという事実だからです。統計の連続性を担保したかたちであれば、補正を行っても行わなくても、賃金に関するアベノミクスのごまかしが露見することになるというわけです。

2013年~15年に「リーマン級」にまで暴落していた

そのような視点から、2000年以降の賃金の推移を独自の試算(2000年の賃金を100として計算)で振り返ってみると、名目賃金は2000~2004年まで大幅に下がり続けた後、2006年までは小幅な上昇に転じたものの、リーマン・ショック前後の2007~2009年に再び大幅に下がり、その後の2017年まではかろうじて横ばいで踏ん張っていることが見て取れます。

中原氏の著書『日本の国難』より

そうはいっても、2016~2017年の名目賃金は2年連続で小幅ながらも増えているので、政府によって「賃金はいよいよ上昇トレンドに入ったのだ」と力強く語られるのは致し方ないのかもしれません。しかしながら、物価の変動率を考慮した実質賃金の動きを名目賃金に重ねて眺めると、政府の主張が明らかに間違っていることがすぐに理解できるようになります。

そのように容易に理解できるのは、実質賃金は2000年以降、名目賃金とほぼ連動するように推移してきたのに対して、2013年以降はその連動性が完全に崩れてしまっているからです。2013年以降の5年間の実質賃金の動向を振り返ってみると、2013年は0.8ポイント減、2014年は2.6ポイント減、2015年は0.9ポイント減と3年連続で減少を続けた後、2016年には0.7ポイントの増加に転じたものの、2017年には再び0.2ポイントの減少へと逆戻りしているのです。

ここで注目したいのは、日本は2012年12月から戦後最長の景気拡大期に入っているにもかかわらず、2013~2015年の実質賃金の下落幅は累計して4.2ポイントにまでなっていて(※厚労省の当時の統計では4.8ポイント減/2015年=100で計算)、その下落幅というのは2007~2009年のリーマン・ショック前後の5.2ポイントに迫っていたということです。そのうえ、2014年の2.6ポイント減という数字は、2008年の1.9ポイント減や2009年の2.2ポイント減を上回り、2000年以降では最大の下落幅となっているのです。