総じて植物ゲノムは動物に比べて長く、遺伝子も多いのだそうだ。
「ゲノムには遺伝子を成すひと続きの部分と、遺伝子と遺伝子の間をつないでいるだけでタンパク質の合成にあずからない部分とがありますが、植物ゲノムは遺伝子の部分が多く、全体的にも長い特徴があります。動物と違って動くことができない植物は、特に環境耐性に対する遺伝子をたくさん持っているんですね。一方動物は、どちらかと言うと遺伝子が少なめで、つなぎ方を変えて変化に対応する傾向があり、戦略も対照的」と言うのは、かずさDNA研究所の田畑哲之所長だ。
さらに「倍数性といって、人を含め動物の多くは母親と父親の2系統から遺伝子が伝えられる2倍体ですが、例えば植物である小麦は6倍体で、A・B・Dという似ているけれども少しずつ異なる3種類のゲノムを2セット併せ持っています。私たちが食べるパンもこの6倍体の小麦でできているんですね」。
しかし植物だと、なぜゲノムが増えてしまうのだろうか?
「細胞分裂時等に起こる何らかの異変が原因でしょうが、動物に起こると、生き延びることができません。しかし植物は比較的それを許容する。
また人の影響も大きくて、雑種強勢といって雑種になると勢いが強くなる現象があるのですが、ゲノムの倍加によっても植物体が大きくなることが知られています。このような『変異種』が人為的に選抜され、作物として現在まで生き残ってきたと考えられます」
ちなみにサツマイモは6倍体、イチゴは8倍体と長く、また、より複雑だ。
「ゲノムを読み取ってもなかなか区別できないので、作物のゲノム解析は実はすごく難しいんです」
田畑所長が植物ゲノムに取り組んでいるのには、いくつかの理由がある。
「作物を使った育種技術を誰がやるのか」という問題意識もその一つだ。