がん治療の大革命となるか? 極貧研究者が生んだ「光免疫療法」とは

カネも伝手もない、情熱だけがあった
週刊現代 プロフィール

穏やかだが確固たる自信

発見から3年後、'12年にはオバマ大統領が一般教書演説で、小林氏の研究の可能性について触れるなど、世界の注目は集まっていく。

しかし、光免疫療法の理論は確立できたとしても、それを臨床試験の段階にまで進め、特許を獲得するには無数のハードルがある。当然、そのためには莫大な資金もいる。

もたもたしていると、小林氏のアイデアに目をつけた資金力が豊富な研究室や製薬会社が先に試験を始めてしまうかもしれない。

画期的ながんの治療法を見つけようと、世界中の製薬会社はしのぎを削っている。何兆円という巨額のカネが動く世界では、小林氏の研究室など、吹けば飛ぶような存在なのだ。

 

「'12年には特許をサンディエゴのベンチャー企業アスピリアン社にライセンスしました。

しかし、ビル・ゲイツの財団などいろいろなところを回り、臨床応用の資金を得るための会議に加わりましたが、なかなかおカネを出してくれるところは見つかりませんでした」

しっかりとしたコンセプトはあるのに、試験が進められない。まったく新しい治療法だけに、周囲の理解が追いつかないという側面もあった。

だが'13年4月、サポートしてくれる人物が現れた。

「楽天の三木谷浩史会長です。当時、三木谷さんはお父様が膵臓がんで闘病中で、世界中のがん治療の最先端を熱心に見て回っていました。

私の親戚が神戸で洋菓子屋をやっていて、楽天市場に早い段階から出品していました。

同じ神戸出身という御縁もあり、三木谷さんとは古い付き合いだった。その親戚を通じて、私の研究の話を聞き、興味を持たれたらしい。

実際に会って話を聞いてみると、専門家が驚くほど詳しくがんのことを勉強されていた。科学的な内容までよく理解されているので、私の研究に対しても即断即決で支援をしてもらえることになりました」

現在、三木谷氏は楽天アスピリアン社の会長という立場で光免疫療法の臨床試験を推進している。グローバル第Ⅲ相試験という最終段階で、日本を含む世界中の病院で試験が進行中だ。

これが承認されると一般の人も実際に治療が受けられるようになるだろう。

「現在、試験を行っているのは頭頸部がん。顔や頭の近くで手術が難しいことと、光を当てやすいという理由からです。

もちろん、光免疫療法は他のがんにも効果があるはず。内視鏡を使って光を当てれば、内臓系のがんにも対応できる。最終ターゲットは、とても難しいがんといわれる膵臓がんです」

そう語る小林氏の微笑みは、穏やかだが確固たる自信に満ちている。

発売中の週刊現代では、このほかにも、光免疫療法の治療コストが安価に抑えられる可能性にも触れ、近い将来の人類とがんの姿について詳述している。

「週刊現代」2019年2月16・23日合併号より

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