米政界にSNS革命?新星オカシオ=コルテスの「心をつかむ技術」

ミレニアル世代ならではの巧みさと限界
奥村 信幸 プロフィール

ネットが彼女に味方する理由

オカシオ=コルテスの活動でとにかく目立つのは、反応の速さと発信の頻度の高さだ。今後どれだけ議員の仕事と両立できるのかわからないが、現在は1日に20件近くのツイートやリツイートを行っている。

リツイートもリンクだけでなく、必ず1行でもコメントを添える。また、自身がヒスパニック系で選挙区にも有色人種が多い土地柄も関係してか、人種やレイシズムの話題に敏感に反応する。

1月13・14日には、CBSテレビの大統領選特別取材班の編成発表のツイッターに「なぜ全員白人で、アフリカン・アメリカンを入れないのか」とリプライ。「メディアを叱りつけるのは、トランプと同じだな」とからかう他誌の記者にも立ち向かって沈黙させるなど、戦闘能力の高さを見せている。

 

彼女の周辺には話題を求めるメディアも群がり、「ボーイフレンドの家族にまでタブロイド紙の取材が来た」と嘆くほどだ。トランプ大統領に近いメディアやネットユーザからの中傷も頻度を増している。そのような「攻撃」が大抵、あまりに稚拙なこともあるが、今のところオカシオ=コルテスはそれらを上手に裁いている印象だ。

下院議員に正式に就任した翌日の2019年1月4日には、匿名の「Qアノン」を名乗るアカウントが、オカシオ=コルテスが大学時代に友人と撮影したダンスの映像を「これがアメリカで人気の共産党員が、高校時代にアホでボンクラなことをしてるビデオだ」とポストした。どうやら評判を落とそうという意図のようだったが、ネット上では「これのどこがマズいんだ?」という反応であふれ、むしろ好感度がアップしてしまった。

映像は彼女がボストン大学で学んでいた2010年に撮影されたもので(オリジナルはこちらで見られる)、フランスのバンド、フェニックスの「リストマニア」と、アメリカの高校生を描いた1985年の名作映画『ブレックファスト・クラブ』のマッシュアップで、テレビ業界で映像の仕事をしてきた筆者が見ても、素人くさいが楽しそうな映像だ。また中傷ツイートは「高校時代の彼女」と書いており、基本情報がそもそも間違っている。

さらにツイッターには「AOCがどんな歌でもダンスします(AOC Dances to Every Song)」なるアカウントまで出現し、彼女が踊る映像に様々な音楽をリミックスしたポストが並ぶなど、かえって知名度も好感度も上げてしまった。

オカシオ=コルテス本人も「どうも共和党は、女性がダンスをするとスキャンダルになると思っているらしいけど、議員だってダンスするってことにいつ気付くんでしょうね(ダンスの絵文字)」というツイートとともに、事務所前の廊下でおどけてダンスする10秒あまりの動画をツイッターとインスタグラムにアップし、ダメを押した(一連の経緯は、ニューヨークタイムズの記事にまとめられている)。

「自分らしい発信」が最も大切

オカシオ=コルテスのこれだけの注目度と発信力を、民主党が放っておくはずもない。1月17日には党の同僚議員に対し、ツイッター社から派遣された代表者とともにソーシャルメディアの使い方を講義した。

出席した議員のひとり、カリフォルニア州のテッド・リュー下院議員はオカシオ=コルテスらと一緒に写った写真をアップし、「これがセルフィーというものだ」とコメントをポスト。彼はニュースフィードなどを活用し、政界ではかなり積極的にツイッターを使っている方だが、彼のタイムラインに登場するのはCNNでコメントするシーンなど「よそ行きの顔」ばかりで、このポスト以外に「セルフィー」は登場していないようだ。インフォーマルな表情を戦略的に使うには、ただ「自撮り」するだけでなく、テクニックや微妙なフィーリング、自信や慣れも必要だ。

ABCテレビによると、オカシオ=コルテスは、この講義でソーシャルメディアの使い方について次のようなアドバイスをしたという。政治家でもアメリカ人でもない私たちにも参考になりそうな項目もあるので、いくつか抜粋しておこう。

 ・ソーシャルメディアは若者のためだけにあるのではない。

 ・老人なら、老人らしくつぶやけばいい。

 ・自分ではない誰かになろうとしない。

 ・ソーシャルメディアはプレスリリースでも、記者会見でもない。

 ・キッチンを撮っても、料理するところを見せても、それはもうみんなやっている。大事なのは自分がしていることに、他の人を巻き込みたいときに使うこと。

 ・最も効果的な行動は「他の普通の議員がやりそうにないことをする」こと。

 ・「ミーム」を知らないならポストしてはいけない。

 ・ソーシャルメディアにはソーシャルメディアのローカルルールがあるので、それに従って謙虚に行動を。しかし選挙区の人たちとソーシャルメディアのユーザーを分けてしまってはいけない。

 ・ブロックしないで、できるだけミュート機能を使う。

今のところオカシオ=コルテスは、これらの原則を忠実に実践して、ソーシャルメディア上のプレゼンスと評価を上げていると言える。

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