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米政界にSNS革命?新星オカシオ=コルテスの「心をつかむ技術」

ミレニアル世代ならではの巧みさと限界

いまアメリカの政治報道で、おそらくトランプ大統領の次に話題にのぼる有名人がいる。重要閣僚でも、トランプ氏周辺に漂う疑惑に関係して追及されている人物でもない。

アレクサンドラ・オカシオ=コルテス。29歳という史上最年少の女性議員として連邦下院議員の仕事をスタートし、1カ月にも満たない民主党の新人だ。ツイッターのハンドルネームから“AOC”と呼ばれている。

 

アメリカ政界の「台風の目」へ

彼女のツイッターのフォロワーは270万人を超えている。12月中旬から約1カ月のリツイートと「いいね」を合わせたインタラクションは1430万件を超え、アメリカの政治家ではトランプ大統領に次いで2位。CNNやニューヨークタイムズなど大手メディア5社の合計を上回る驚異的な数字だ。

AXIOSというビジネスパーソンや政策プロフェッショナル向けのメディアなどが行った世論調査では、まだ大統領候補の資格がないにもかかわらず(就任時に35歳以上である必要がある)、民主党支持者と、どちらかというと民主党に好意的な人たちの74%が、「彼女が大統領候補だったら投票する」と回答した

彼女の選挙区はニューヨーク州第14区、マンハッタンの隣、クイーンズとブロンクスの一部だ。2018年の中間選挙を前にした6月、この選挙区で10期にわたって当選してきた党の重鎮クローリー氏を破って民主党の候補者となり、注目の人となった。

プエルトリコ系の家族で育ち、大学を卒業後、ヒスパニック系移民らを支援する団体のリーダーを務める一方、バーテンダーとして働いていたという異色の経歴もクローズアップされてきた。

彼女は2016年の大統領選挙で、民主党候補の座をヒラリー・クリントンと最後まで争った上院議員のバーニー・サンダースを支援した。彼と同じように自らを「社会民主主義者」と名乗り、高所得者への高額課税、貧困層への医療保険の充実、地球温暖化防止のための積極的な政策などを主張する、反トランプの急先鋒でもある。

2020年の大統領選挙を前に、民主党は穏健中道路線を捨てて、ラジカルなリベラル層の考え方を前面に出していかないと生き残れないのではないか、などの議論もすでに始まっている。今後のアメリカ政界の「台風の目」になりそうだ。

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政治家とSNSの関係を変える可能性

本稿では、彼女の周辺で過熱するメディアにまつわるジャーナリズムの問題や、そのような中で彼女がいかにソーシャルメディアを駆使してメッセージを届けようとしているかという、政治コミュケーションの問題に焦点を絞って議論したい。

オカシオ=コルテスに注目するのは、ミレニアル(1981〜96年生まれ)世代の彼女が行う発信が、彼女の同世代や、それより若い「ジェネレーションZ(1996年以降生まれ)」の若い世代に共感を呼び、「政治を身近に感じてもらう」効果を生み出しつつあるように見えるからである。

また、ソーシャルメディアで重要なのは、言われなき中傷を受けたり、失言などを犯したりしたときに、ダメージを最小限にするリスク管理だが、まだ就任間もない中で、彼女はすでに悪意あるデマを流され、政策の勉強不足からくる誤った発言で批判されもした。すべての対応が完璧とはいかないが、これらをかなり上手に切り抜けている印象がある。

WIREDのサイトでは、彼女がソーシャルメディアを駆使した、新しい政治家のモデルとなるのではないかという評論も現れた。後に大統領となるリンカーンが1858年にイリノイ州上院議員の席を争う際に、ライバルのダグラスと繰り広げた討論会が大々的に新聞に取り上げられ、彼の全米での知名度を上げ、また後の政治討論のモデルとなったように。

あるいは、1960年の大統領選挙のテレビ討論会で、ひげを剃らずに出演し、暗く疲れ切った表情で有権者をがっかりさせた共和党のニクソンに対し、颯爽とした若々しい表情を印象づけて当選を勝ち取ったケネディが、政治家のイメージ戦略の重要性を世に示し、政治におけるテレビの役割が増していく契機となったように。

“AOC”がソーシャルメディアと政治のあり方を決定的に変えていくのではないか――そんな、いささか過大評価とも思えるような見方まで出てきている。

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ツイッターを多用するというだけなら、トランプ大統領も従来とは違う発信を行っていると言えるかもしれない。しかし、ソーシャルメディアを使っていても、アナウンスやモノローグ、政治的な主張を連呼するような一方的な発信に終始している。

オカシオ=コルテスのツイッターのタイムラインを見れば一目瞭然だが、彼女とトランプの大きな違いは、自分自身の一人語りよりも、リプライ、メンションをしてくれたユーザーへのコメント、自分がとりあげられたものだけでなく、関心があるニュースやイベント等のリンクやリツイートなど、ツイッターの持つ機能を最大限に生かしたコミュニケーションをめざしている点だ。

そのリツイートやリンクも、必ず自分のコメントを追加するなど、自分に関心を持ってくれたユーザーと対話をしようとしている。