Photo by Phil Manker / Flickr

1mm未満の極小生物が、巨大生物の進化を促す「エンジン」だった!

「無視されてきた」化石に魅せられて
ブルーバックスの話題書『海と陸をつなぐ進化論』著者、須藤斎氏(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻准教授)による野心的エッセイ。
数十メートルにおよぶクジラの進化に多大な影響を及ぼした、1ミリメートルに満たない「ある生物」とは?

執筆にも研究にも共通するもの

似ていないようで似ているもの──ふだんはほとんどすることのない、「一般向けの本を書く」という時間を過ごすなかで、「研究」と「本を書く」という作業には、どこか通底する部分があるものだなと痛感している。

私は、化石をもとに生物の進化のありようを探る研究者だ。これまで研究を続けてきて、たとえば、わざわざ北極まで行ったのに、目的とする化石のサンプルを採れなかったなど、思うような成果を出せないことも多かった。研究の道は、決して一直線ではない。

このほど上梓した『海と陸をつなぐ進化論 気候変動と微生物がもたらした驚きの共進化』(講談社ブルーバックス)の執筆を決めてからも、刊行までには紆余曲折があった。無事に校了した今、「研究」と「執筆」の共通項に思いをいたしながら、しみじみとした安堵感を覚えている。

といっても、最終校正が終わってゲラを送った直後に、またまた慣れない原稿執筆を依頼され(本稿のことです)、心がまったく休まらないままなのだが……。

『海と陸をつなぐ進化論』は、大陸移動や海流構造の変化など、地球環境に生じたさまざまな変動に影響を受けた結果、大繁栄を遂げたとある極小生物が、海洋の生態系全体を巻き込み、クジラに代表される巨大生物の進化を促す「エンジン」の役割を果たしたのではないかという仮説を掲げ、その検証の過程を紹介するものである。

珪藻Photo by Getty Images

思いもよらぬ「出会い」に導かれて

私自身の研究やその成果、あるいは、そこで得てきた経験や日々のあり方をまとめるにあたり、いつも2つの疑問が頭の片隅にあった。

①なぜ「研究者という職業」を選んだのか?
②その職を長く続けているのはなぜか?

正直にいって、私は研究というものを生業にしたいと強く願う学生ではなかった。

「化石」の研究に従事する者の多くは、子供のころから恐竜をはじめとする古生物が大好きで、化石収集を続けているなど、幼少期からの夢をかなえた人たちである。私は決して、そういう子供ではなかった。

だから、彼らに対してどこか、コンプレックスを持ち続けている。