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ドイツが目指す「脱原発」「脱石炭」は本当に実現可能か

こんな無茶なエネルギー政策は他にない

ありえない目標

ドイツでは、温暖化のせいでまもなく地球が滅びるというシナリオが広まっていて、ほとんどパニックに近い。

温暖化の原因はCO2ということで、「CO2削減」が現代ドイツ教の教義。しかも、メディアと環境団体が煽りたてるので、国民のあいだでは石炭火力をすぐに止めろという声が日増しに高くなっている。

特に褐炭という質の悪い石炭の方は、CO2を多く排出するため、それを燃やしている電力会社は極悪人扱い。皆、「早く止めなければ手遅れになる!」と、かなりヒステリックだ。

昨年末からは、中学生や高校生までが、毎金曜日に学校をさぼって街に繰り出し、「自分たちの未来のために」とデモを始めた。無責任な大人への抗議だそうで、プラカードには「かけがえのない惑星を救え!」「もう我慢できない!」などと書いてある。

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そして、巷のアンケートでは、大多数の国民がそういう子供たちの行動を「正しい」と評価。学校も黙認どころか、さぼってもいいという許可を出していたらしい。

ドイツの学校では、長年、原子力や火力を悪として教育してきたのだから、この成り行きは教育がもたらした果実である。デモをしている中学生や高校生も楽しそうだが、教師も誇らしいのではないか。

私ももちろんCO2削減に異存はないが、とはいえ、たかが人間の力で、地球の温度を下げるなどという大それたことが、はたしてできるものなのか?

さて、ドイツでは原発が2022年に止まる予定だ。つまり目下のところ、国家の目標は、「脱原発」+「脱石炭」。こう書くと、日本で羨ましがる人が出るかもしれないので、その必要はないということをこれから書きたい。ドイツだって、両方をやめるなど、実は至難の技なのである。

 

ところが、ドイツ政府は果敢にも、その至難の技を目指しており、去年は脱石炭の具体策を練るため、「石炭委員会」を招集した。委員会に課せられたのは、石炭火力を止めることで生じるさまざまな障害を想定し、国家経済の被害を最小限に留めるためには、いつ、何をどうすれば良いかという計画の策定。

審議は相当に手こずったらしいが、1月26日未明、ようやく大まかな脱石炭の青写真が発表された。それによれば、石炭火力は遅くとも2038年にはドイツから消える予定だ。

電気代がさらに上がる

ちなみに、2011年、福島第1原発の事故のあと、脱原発の前倒しについて審議したのが、やはりドイツ政府が招集した「倫理委員会」だった。ところが「倫理委員会」のメンバーには、原発やエネルギーの専門家がおらず、その代わり、「倫理委員会」の面目躍如、神学者が入っていた。

その結果、結局、2022年までの完全脱原発が決まったのだが、7年半が過ぎた今、再エネ賦課金(電気代に乗っている再エネ経費)の負担が平均家庭で月2800円にも膨らんでいる。今やドイツの電気代は、1位だったデンマークに追いつき、まもなく追い越す予定だ。去年9月には、脱原発の経費が無駄に掛かりすぎているとして、連邦会計監査院が警告まで出した。

今回もそれと似たようなことが繰り返されている。石炭委員会31人のメンバーは、政治家、企業、労働組合の代表、研究者などからなるが、目立ったのがグリーンピース、BUND(ドイツでディーゼル車の走行禁止を訴えて勝利を収めている環境団体)、DNR(環境団体の連合組織)といった名うての環境保護団体の代表。また、研究者も再エネや環境畑の人が多かった。

環境保護団体の特徴は、一言でいうなら、経済上の見地を完全に無視することだ。