本橋麻里さん(右)と構成を担当した竹田聡一郎さん

著者に著書のすべてを確認させない「出版の禁じ手」をやってみて

本橋麻里「初の著書」誕生秘話を明かす
平昌五輪で銅メダルを獲得したカーリング女子代表チーム、ロコ・ソラーレは今月開催される日本選手権での大活躍が期待できます。そのチームを立ち上げた本橋麻里さんの著書『0から1をつくる――地元で見つけた、世界での勝ち方』を構成した竹田聡一郎さんに、本の誕生秘話を明かしてもらいました。

※著書刊行を記念し、2月18日(月)15時より紀伊国屋書店札幌本店にて、本橋麻里さんのサイン会を行います!

【日時】2019年2月18日(月) 15:00~16:00(予定)
【場所】紀伊國屋書店札幌本店1階インナーガーデン              【定員】100名(要整理券)                         【お問い合わせ先】紀伊國屋書店札幌本店 (代表)011-231-2131

サイン会の詳細については、こちらもご参照ください。

「麻里ちゃん、驚くかなあ」

「どんなサプライズよりも驚き、嬉しかったです。粋な計らい、本当に有難うございました。この書籍が、自分だけのものになるのが気になっていたので、みんなのコメントでチームのものになり、安心しています」

本橋麻里にとって初めての著書『0から1をつくる――地元で見つけた、世界での勝ち方』発売前日に、彼女から届いた原文そのままのメールだ。

「サプライズ」とは、本橋本人には内緒でロコ・ソラーレのメンバーと、夫の謙次さんからそれぞれ、彼女へのメッセージをもらい、それを10ページほど著書に掲載したことだった。

出版界の当然のルールとして、著者にはタイトル、文章、写真、ページレイアウト、帯のデザイン・文言、目次の字体に至るまで、あらゆる事柄を事前にチェックしてもらう。そして気になる箇所が出てくれば、基本的には著者の意向を最大限、尊重して修正する。

つまり、今回のように著者本人が知らないページが存在することは大きなタブーだ。場合によっては、著者が怒り出すケースもあるだろう。編集部からは「ゲラ(校正刷り)の段階で見せて、本人の了承を得たほうが良いのでは……」と不安の声も出た。

しかし、結果的には「本ができてからのお楽しみ」という当初の(構成者としての)企みを完遂した。

ロコ・ソラーレのメンバーがそれぞれ、いかにも楽しそうに、「サプライズとイタズラの中間」という感じで、本橋へのメッセージを快く、真摯に出してくれたからだ。

「麻里ちゃん、驚くかなあ。喜んでくれるかなあ」

誰に向けてでもない吉田夕梨花のつぶやきや、本橋と最初に話した2015年春の情景を、時間をかけてじっくり思い出してくれた藤澤五月の真剣な表情にも後押しされた。

そして五輪銅メダルチームとして、日本代表として、ワールドツアーやW杯に挑む多忙なシーズンにも拘らず、「そういう事情なら!」とチームに接触し、コメントをもらうことを快諾してくれたマネジメント会社や、小野寺亮二コーチ、大森達也トレーナーにも、ここで改めて感謝の意を記したい。

作業は、担当編集者が細心の注意を払いながら進行した。本橋に確認ゲラを送る時、メンバーのメッセージのページを抜き取っておくことはもちろん、目次ページに記された「エクストラエンド 麻里ちゃんへ」を修正液で丁寧に消して、それをコピーしたものに差し替えた。奥付に記された総ページ数も怪しまれないように消したものに差し替えて送付した。

一連の細かな作業は、英語でいうところの「white lie」(優しい、罪のない嘘)だろう。

「みんなからの温かいメッセージで、みんなの本になって嬉しいです」

出版会見で本橋は、集まった18社のメディアにそう心情を語ってくれた。

会見の場で微笑む麻里さん

札幌合宿でメンバーが見せた大クセ

実際、どのように各メンバーからサプライズメッセージをもらったか、せっかくの機会なので明かしたいと思う。

最初は鈴木夕湖だった。本橋がセカンドチーム「ロコ・ステラ」と共に練習している風景を撮影していた際、カーリングホールにひょっこり顔を出した。事情を説明すると「分かりました、いいっすよー」と、応じてくれた。ひょいっと小包を担ぐかのように気持ちよく了承してくれるのが彼女らしい。

それぞれのメッセージはぜひ『0から1をつくる』の中で確認していただきたいのだが、まずは鈴木夕湖のメッセージをまとめ、ゲラにして昨年末の札幌合宿に持参した。

「サインも入れて、こういう感じで載ります」と見本にして他のメンバーに見せると、打てば響くを地でいくキャラクターの吉田知那美はすぐに反応し、本に記されたことだけではなく、「2ページ分のメッセージだからもう十分です」とこちらから止めるまで、自分の思いと感謝を、彼女らしい言い回しで淀みなく語ってくれた。