我々は、「ディスプレイ」に囲まれて生活している。
スマートフォンやタブレット、パソコンはもちろん、テレビも欠かすことはできない。街中を歩けば多数のサイネージ(広告用ディスプレイ)があり、券売機や自販機もディスプレイが必須になってきた。
このように、我々の生活を支えるさまざまな機器は「ディスプレイ」とセットで成り立っており、ディスプレイテクノロジーの変化が、家電ビジネスを変えていく。
1月8日から11日まで、米・ラスベガスで開催されたテクノロジーイベント「CES 2019」では、その一端が示された。スマホもテレビも当たり前になった今、次に私たちの生活を変えるものは、「ディスプレイの進化」とともに生まれて来ることになりそうだ。
現地取材した筆者が、会場で実際に体感した印象も含めて、最新事情をリポートする。
今回のCESでは、大手家電メーカーのほとんどが、75インチ以上で8K解像度のテレビを展示した。
理由はシンプルで、「売れるから」。
ソニー、LG、サムスンはそろって、「2018年、アメリカでは、75インチ以上のテレビの市場が前年比で2倍に拡大した」とコメントしている。もともと大型志向の強いアメリカでは、量販店でも、50型は「中型」扱い。プレミアム製品で利益率の高いビジネスを狙うトップメーカーにとって、「超大型」こそ、収益確保の道なのだ。
背景には、製造面からの事情もある。
中国・BOEなどの液晶パネルメーカーでは、「10.5世代」とよばれる工場の稼働が本格化している。10.5世代工場では、2940mm×3370mmのガラスを使って液晶を製造する。世代が進むに従って大きなガラスを使えるようになり、結果として「大きなディスプレイパネル」の製造コストが低下していく。
ソニーでテレビの商品企画責任者を務める、ソニービジュアルプロダクツ・企画マーケティング部門・部門長の長尾和芳氏は、「10.5世代の液晶工場が稼働してくると、プレミアムとしての中心は65/75型になり、55型はかなりコモディティ化する。65型、できれば75型サイズの市場でビジネス的な優位性を確保したい」と話す。
では、ディスプレイの超大型化と8Kには、どういう関係があるのだろうか? ──大ありなのだ。
ディスプレイの大型化は、画面を構成する「画素」の大型化でもある。画素が大型化すると、そのぶん映像が荒く感じる。このことは、2Kから4Kになるときにも起きたのだが、75型を超える超大型テレビではさらに深刻になる。
人間の目はドットそのものを見ているわけではないが、現在のディスプレイはドットの集まりでできている。その境目の不自然さが、商品性に影響してくるのだ。
現状では、8Kコンテンツはほとんど存在しない。日本国内ではNHKがなんとか放送しているものの、他国では8K放送の予定はなく、ネット配信すら想定されていない。
ようやく普及し始めた4Kのコンテンツをソフト的な処理によって映像のディテールを補い、