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2019年の市場はどうなる?悪者扱いの「空売り」の歴史に学ぶこと

バカにできない「ショート」の効能
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

「ショート」の効能

ショートには割高になっている株を調整するプライシング機能がある。株が下がる時、それは「ショート」の仕業というより「ロング」が売るからだというのは、100年前にリバモアが指摘している。多くの場合、空売りが株を下げるというより、株が下がるべき実態が先に存在するのだ。

現に、空売り規制も株式市場の歴史とともに存在してきたが、うまくいっていない。

リーマンショックの際には、SEC(米国証券調査委員会)が800近くの金融株の空売りを3週間禁止した。しかしそれは逆効果で、市場の流動性(取引のしやすさ)が低下し、買い手と売り手のスプレッドが拡大して取引コストが上昇、下がる株が更に下がりやすくなってしまったのだ。当時のSEC委員長だったクリストファー・コックス氏は、空売り規制が失策であったと後に認めている。

 

最近ではESGの高まりとともに、企業の非社会的・倫理的な行動に対して空売りをかける「優しいハゲタカ」(フェイスブックに関する過去記事参照)も増えている。不正会計や損失隠しが明るみに出て2001年に巨額倒産したエンロンを空売りしたジム・チェイノスもそのハシリだ。ハサミと「ショート」は、使いようによっては世の中の役にたつのだ。

さて、今年も「ショート」は幅を利かせるだろうか。心配なのは、マネー経済が大きくなり「株が下がるから景気が悪くなる」というシナリオだ。

上海総合指数が昨年25%下落した中国でiPhoneの売り上げが不振となり、アップルが下方修正をしたというニュースが年明けに飛び込んできた。保有株資産が大幅に目減りすれば、消費者の購買意欲も減退しかねない。センチメントがいつのまにかファンダメンタルになりかねないのが、肥大した今の株式市場の怖さだ。

こうした方向感の掴めない市場では、無理に投資しないというのも賢明な選択肢だと筆者は思う。