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ブロックチェーンとサトシ・ナカモト論文を完全理解する「10の問い」

これからの「必修知識」を学び直す

ブロックチェーンは、まだ終わっていない

ビットコインは、ネット上のお金であり、暗号通貨と呼ばれるものの先駆けだ。一時、1ビットコイン(1BTC)が200万円を超えるまで高騰したが、その後、40万円くらいまで暴落し、2019年1月現在、価格は低迷している。

そのため、「暗号通貨は終わった」との意見も多いが、筆者はそうではないと考える。なぜなら、ビットコインをはじめとする暗号通貨の本質は、ブロックチェーンと呼ばれるネット上の新技術にあるからだ。

ブロックチェーンは、従来のお金の枠を越えて、多くの応用性を備えている。大胆に言えば、「お金における革命」なのである。

したがって、暗号通貨の技術の本質を知らないと、今後のビジネスの潮流を見誤ることになるだろう。本稿では、暗号通貨を最初に発明した「サトシ・ナカモト論文」に立ち返り、その巧みな発想をひもとく。

論文は専門的なので部分的に訳出し、筆者の解説を中心にその要点を10問のQ&A形式で読み解いていく。読者は、この論文の行間からナカモトの「思想」を読み取ることで、「来るべき社会の変革」を感じ取って欲しい。

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Q1:既存のインターネット上の商取引における問題点は何か?

A. 第三者機関である金融機関に頼らざるを得ないこと。

金融機関が取引の仲介に入ることには、「最小限の取引サイズが設定され、少額取引が制限される」、「可逆性(支払いが成立しなかったり、反故になったりする)があるため、信用の必要度が拡がる」、「顧客について慎重になるため、より多くの情報を要求される」など、多くの障害やコストがある。

ナカモト論文では、このことを次のように言い表している。

〈インターネット上の取引は、電子支払いのプロセスにおいて、信頼のある第三者としての金融機関にもっぱら頼っている。そのシステムがたいていの取引で十分に機能している一方で、信頼性を基礎としたモデルに固有の脆弱性に苦しんでいる。金融機関はいざこざを仲裁するのを避けることができないため、完全に非可逆的な取引はほとんど可能ではない〉

 

Q2:なぜ、既存の商取引ではこのような問題が発生するのか?

A. それが古典的な「信用」に依って立つシステムだから。

ナカモトは、この「信用」という概念を不要にしたいと望む。そのため、「信用仲介(金融機関による仲介のこと)をなくして、商取引におけるコストや不確実性を消し去ることができるか」という問題提起をしたのだ。

ナカモトの発想には、「中央集権的な権威」を無用の長物としたい、という強い意志が存在する。これこそが、彼がブロックチェーンの仕組みを案出した根本的な理由だ。そして、この夢のような理念を実現する技術だからこそ、ブロックチェーンは真に革新的なのである。

ナカモトはこのことを次のように記述している。

〈必要なものは、信用仲介ではなく、暗号技術を基礎とした電子支払いのシステムである。取引者が第三の信用機関を要せず、互いに直接的に取引できる仕組みだ。計算機的に不可逆的な取引は、売り手を詐欺から守り、信用仲介メカニズムが買い手を守るのと同等な仕組みを簡単に実施できるであろう〉