目指せノーベル賞! じつは謎だらけ「発光生物」のミステリー

「進化していない」からこそ光る!?
中川隆夫, ブルーバックス編集部

発光による酸化で酸素を除去

「光る理由として、いま世界的に有力なのはスカベンジャー説です」

スカベンジャーといえば、腐肉食やゴミ漁りの意味でよく使われるが、ここではちょっと違う意味で使われるようだ。「不要物を除去する」ということらしい。

「生物にとって酸素は毒です。人間のように高等な生物は、酸素除去のしくみを他にもっていますが、彼ら発光生物は酸化することによって酸素をスカベンジ(除去)しているのです。つまり、危険な酸素を燃やすために光っている。光ることで酸素の毒が消えているのです」(近江谷さん)

発光=基質の酸化

哺乳類や両生類、は虫類、鳥類に発光生物はいない。発光バクテリアから魚類まで、すなわち系統発生の初期にある生物だけが発光するしくみをもっているという。三谷さんが具体的に解説してくれた。

「光るために必要なものが基質(総称してルシフェリンという)です。基質の酸化反応によって光ります。その酸化反応を効率よく進めるのが酵素(ルシフェラーゼ)の役目です。酵素は触媒として反応を助けているのです。酵素がなければ光って見えないということになります」

生体内でルシフェリンが酸化しているようすを、我々は「きれいだな」と見ているということだ。

【写真】三谷さん
  三谷さん

深海ではメジャーな発光生物

「発光生物は、およそ700属に存在、そのうち深海生物の8割以上が光ると言われています」

と近江谷さんは言う。つまり、深海では光らないほうが少数派。なぜ人間は光らないのかと、聞き返されそうだ。

光るしくみは意外と単純らしい。しかしその効果は絶大だ。人間だって、漆黒の闇にわずかな光があれば、フラフラと引き寄せられる。

熱を出さない光=コールドライト

「紀元前の哲学者アリストテレスの時代から、人は光る生物に興味をもっていました。彼はこの光を、熱を出さない光=コールドライト(冷光)と呼んでいました。彼らが見ていたものの1つは、地中海の貝です。カモメガイだと思われますが、ローマ時代には貝からポタポタと落ちる光る液体をみんなでパンにつけて食べることがけっこう流行ったらしい」

「日本で最初に記述されたのは『日本書紀』で、森の中で光る神様がざわめいているという記述があります。ホタルでしょうね」(近江谷さん)

【写真】古来より、人は光る生物に興味を持っていた、と語る近江谷さん
  古来より人は光る生物に興味をもっていた、と語る近江谷さん

発光の研究は進む

人工の光に囲まれてしまった現代とは違い、昔は炎しか夜を照らすものはなかった。その時代に熱をもたない光を発する生物は、どんなに神秘的だっただろう。それ以降、ベンジャミン・フランクリン、"ボイルの法則"のロバート・ボイル、ルイ・パスツールなど、幾多の科学者がこの光る生物の謎を解こうと挑戦してきた。

19世紀後半になってフランスの生物学者ラファエル・デュボアが2つの物質が混ざることで光っていることを発見した。基質と酵素の組み合わせだ。今ではさらに研究が進み、なぜ光るのかということがわかりつつある。

「1つの分子が酸化されるときに、そのうちの3~4割が光エネルギーに変換され、熱はほとんど出ないと言われています。それが白熱電球と違うところで、電球はほとんどを熱エネルギーに変えてしまいます。だから発光生物はすごく効率的に光っているのです」(三谷さん)