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目指せノーベル賞! じつは謎だらけ「発光生物」のミステリー

「進化していない」からこそ光る!?

ホタルをはじめとして、光る生物の存在は古くから人の興味を引いてきた。最近では深海生物の映像が注目を集めている。

ボヤッと光るものから、色鮮やかに点滅するイカやヒトデ。あまりにも多彩な発光生物の世界に、あらためて驚く。どうして彼らは光るのだろう。なぜ光る能力を身につけたのか。

素朴な疑問を胸に、産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門の一室を訪ねた。待ち構えていたのは、近江谷克裕さんと、三谷恭雄さん。ともに、生物発光の謎を解き明かしながら、その性質を産業へと応用する研究をしている人たちだ。

生物が光る目的とは

人間はホタルのように光るしくみをもっていません。だからこそ、ホタルが高度なしくみで光っているようにも思えるし、かといってクラゲや深海のイカが高度なしくみをもっているとも考えにくい。なぜ彼らは光るのでしょうか。

「たとえば、ホタルが光るのは主に求愛行動と考えられています。オスがメスの気を引くためです。チョウチンアンコウは、発光バクテリアを利用して鼻先に垂らした提灯のようなところを光らせます。光でエサを呼び寄せて、それを食べる。つまり、捕食のために光っています。深海にはお腹が光る魚がたくさんいます。40cmほどの小さなサメも光るものがいますね」(近江谷さん)

【写真】近江谷さん
  近江谷さん

生息地によって光の強さが変化する

お腹が光るとは、どういうことだろう?

「近江谷さんとノルウェーまで、光るサメを獲りに行ったことがありました。そのカラスザメは腹の部分が薄ぼんやりと青く光ります。カウンター・イルミネーションという言い方をしますね。200~300mの深さになると、太陽の光が弱くなります。下から見たときにお腹の部分が影になって見える。それを隠すために、周囲の明るさに溶け込むよう光るんです。下から狙っているより大型の捕食者の目を欺いて身を守るのが目的ですね」(三谷さん)

「深海によって光の到達量が違うので、生息している深さで光の量が変わるのです。200mぐらいだと、光の量は水面の100分の1くらい。だから薄く光るのがいいのです」(近江谷さん)

【写真】カラスザメ
  カラスザメの全身(上)と発光したお腹 ©産総研

光をフル活用した生存戦略

身を守る手段として、光る。それにしても、深海にいる生物は、必要以上に光っているように見えますが。

「富山のホタルイカを研究している人が言うには、光をつければ敵に見えますけど、それを消せばまたわからなくなる。わざとつけたり消したりして、逃げる。つまり攪乱作戦です。他に、ダンゴイカの場合は、光を吹きつけて敵を脅かしているんです」(近江谷さん)

【写真】ダンゴイカ
  ダンゴイカ photo by gettyimages

タコの墨吹きのように、光る分泌物を吹き出して注意を引きつけ、その間に逃げるウミホタルのような発光生物もいるという。

「求愛やコミュニケーション、捕食、目くらましなど、それぞれの戦略として光を使っているのです」(近江谷さん)

光る側と、光を見る側。双方がいるということは、生物の発光は、視覚の発達とともに進化してきたのだろうか。

「それは、たぶん違うんです」と近江谷さんは否定する。