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今年の「医学部2次試験」この話題が、面接で最も聞かれる可能性

ポイントは「自己決定」「ゲノム編集」

昨年末から今年の年頭にかけて、医学部入試不正問題について大きな動きがあった。

合格者を「不適切な枠組み」で選考していた大学のうち、数校は新たに追加合格者を出し、文科省のお達し通り、各大学とも今年度の入試は「厳正かつ適正に選考する」方向で推移している。医学部受験戦線は、「異常あり」から徐々に「正常」へと軌道修正されつつあると言って良い。

しかし、「厳正にかつ適正に選考する」ということは、つまり医学部2次試験の選考スタイルが従来よりも厳しい内容になることを意味するだろう。具体的に想定されるのは、小論文、面接試験の点数化や出題内容の難化である。

では一体、その実状はどのようなものになるか。私の予想を少し記してみたい。

 

「変化球の質問」が増えている

1月末日から実施されている医学部2次試験の趨勢を予想する上では、既に昨年の11月、12月に実施された私立医学部推薦入試やAO入試の出題内容の分析、検証が重要である。なぜなら、医学部教員の問題意識はおおむね類似傾向にあるはずで、サンプルとして極めて参考になるからだ。

実際に推薦入試で訊かれたことを教え子から聞き取りで探ると、やはり専門的な質問や、従来の定型的な質問とはやや異なる変化球の類が増えているようだ。

教え子からの情報を分析し、気になる質問をピックアップしてゆく中で、以下の15の質問項目が目に止まった。

1. アイスブレイクとしてお聞きします。2025年の万博開催が決まった都市はどこですか?

2. あなたは万博に行きたいと思いますか?

3. 医師を目指すにあたり、受験勉強以外に何か特別にやっていたことはありますか?

4. そこで何を学び、何を感じましたか?

5. 渋谷のハロウィン騒動についてどう思いますか?

6. 10月31日、あなたはどこで何をして過ごしていましたか?

7. 大学に入学後、新たにできた友人に薦めたい本を1冊教えてください。

8. その本から、あなた自身は何を学びましたか?

9. 成人年齢の引き下げについてどう思いますか?

10. オプジーボについてどう思いますか?

11. 金属の強度を改ざんする事件がありましたが、これについてどう思いますか?

12. 日産のゴーン事件を知っていますか? これについてどう思いますか?

13.ゲノム編集と新型出生前診断についてどう思いますか?

14. 現代は「技術」が先行しているか、それとも「科学」が先行しているか、どちらだと思いますか? その理由と、それを踏まえた上で私たちはどのように生きていくべきだと思いますか?

15. 人間の「行動」と人工知能の「行動」は、どちらが優れていると思いますか? また、そう考える理由は何ですか?

[※1〜8は聖マリアンナ医科大学医学部医学科推薦入試の面接試験で聞かれた事柄。13は同推薦入試小論文の題材。9〜12は産業医科大学医学部医学科推薦入試の面接試験で聞かれた事柄。14は同推薦入試小論文の題材。15は英語小論文の題材。いずれも筆者の教え子からの聞き取り情報であることをご理解いただきたい]

印象を述べると、1〜4番、7番、8番が幅広い教養に対する興味を測り、受験勉強にとどまらない「知」への意識の程度を探ろうとしているように思う。

一方、ハロウィンに関する5番、6番は、報道で誰もが目にした出来事であろう。この件では今年に入り逮捕者まで出たが、質問の背景には「自己決定権と他害禁止原理」に関する理解を問う意図があると考えられる。

手短に言えば、「自己が楽しみを追求することは自由であるが、路上の自動車を転覆させるなど、他者に危害を加えることは許されない」というような認識があるかを探ろうとしている。こうした自己決定という切り口で言えば、9番もその範疇に含まれる。

10〜12番は社会時事色が強いが、10番はノーベル生理学・医学賞がらみであり、昨年、本庶佑・京都大学特別教授が受賞する前から既によく問われていた。

13〜15番はやや専門性が高い質問であり、難関医学部に特色的な質問だ。殊に13番はここ最近、中国人研究者との関係でにわかに注目を集めており、要注意である。「医学研究と生命倫理の協調と両立はなしうるか」という大きな問題が内在しているこの話題は、今年の医学部2次試験の目玉となると思われる。

上に述べた「気になる質問」は、1問1答式の通常の質問である。だが、このところの医学部2次試験の傾向として顕著になりつつあるのは、あるテーマについて複数の事柄を問うMMI(Multiple Mini-Interview)の増加である。今年も予想通り、MMI型の出題と思われる形式が見られたので、これについても少し触れておこう。