クールジャパン機構の「おサムい裁判」の行方~苦しい言い分を連発…

そして国費が溶けていく
阿部 平三郎

国費が……

真っ向から対立する主張は、どちらかに大ウソが紛れているのは間違いない。

事業失敗の責任がどちらにどれくらいあるかはまだ推し量れないが、ただ、少なくとも「M氏が機構の投資をしつこく求めてきた」という冒頭の機構の主張は、原告側から提出された新証拠によって崩れそうだ。

証拠とは、M氏が機構幹部たちから受け取ったメールである。

<投資チームには前向きに検討するよう、指示してあります。会長、私とも、基本的には投資案件としてGOサイン、それを前提に詳細をつめるよう本日の会議でも伝えてあります>

そう書かれたメールをM氏が受け取ったのは2014年6月10日。差出人はクールジャパン機構の太田信之社長(当時)である。機構がまさしく「投資を明確に断った」と主張した同じ月のことで、その主張には矛盾を感じずにはいられない。

 

長崎県にあるお茶の老舗に生まれたM氏は、1980年代に単身渡米して日本茶の小売店や抹茶アイスクリームの製造販売を手がけ、日本茶の普及に尽力してきた人物である。8年続いた緑茶カフェもその一環で、閉店理由を「経営不振」と決めつけた機構の主張も原告側は否定している(そもそも8年続いたなら、機構が共同出資した日本茶カフェよりマシだとも言える)。

M氏に機構の投資話を持ちかけたのは、機構の取締役で、投資を判断する海外需要開拓委員会の委員のK氏だったというのが、原告側の主張だ。実際、K氏がロスを訪ね、M氏のアポを取り付けるメールも証拠提出された。

そのK氏から15年1月にM氏が受け取ったメールには、こんな一文も記されている。時期は合弁事業の契約直前だ。

<いよいよ条件や契約面のテクニカルな詰めだと思います。多くの案件が、一見して『こんな不平等条約は嫌だ』と反発するものですが、冷静に考えていただくと大した意味はない、というか国のファンドとしてのアリバイ作りのような位置づけですので、calm down かつ大所高所の発想でご対応いただければ、と思います>

じつは機構との契約には、機構にとって一方的に有利な条件が含まれている。M氏がうかつにも”不平等条約”を受け入れたのは、「国のアリバイづくりで大した意味がない」というK氏の説得があったからだ、という。

不平等条約の一つが、原告側に契約違反があったときに、機構は株式を出資時の価格か評価価格の高い方の130%もの値段で買い取らせられる権利を持つ、とするものだ。原告側に同じ権利は与えられていない。

機構は長崎の企業グループとの対立が先鋭化した17年以降、この条件を持ち出し、機構の保有株を出資時の130%の値段で買い取らせる権利を主張しつつ、清算するよう迫った。赤字続きの事業をなんとか自前で続けたい民間事業者に突きつける要求にしては、あまりに酷ではないだろうか。

パートナーと円満に別れる調整能力を欠き、裁判所の調停も成立させられず、泥沼化する争いは米国の法廷にも持ち込まれた。

国際弁護士も使って多額の訴訟費用をつぎ込むなどして「無為に国費を散逸させている」のが、民間事業者の「支援」を看板に掲げるクールジャパン機構のおサムい惨状である。