やっぱりグローバリズムの不利益を再認識すべきときが来た

米中衝突の根底にあるものとは
大原 浩 プロフィール

中韓をはじめとする「真似っこ経済」の害

問題は「グローバリズム」というシステムに元々内在していたものだけでは無い。2001年に共産党支配の中国に対してWTO加盟を認めたことが、先進資本主義国の最大級の誤りである。

例えば「労働の対価を国民に平等に配分する」という共産主義のお題目に異議を唱える人はほとんどいないが、その立派な主張を実現した共産主義・社会主義国家がいまだに存在しないことは、だれでも知っている。

むしろ、共産主義・社会主義国家の方が独裁政党である共産党の腐敗が激しく、幹部の蓄財はあきれるほどである。

グローバリズムや世界貿易も、参加者が他人を思いやる善人ばかりであれば問題は無い。しかし、先進資本主義諸国においても「利己的な行動」は例外とは言えない。

特に、共産党支配の中国をはじめとする独裁国家は本来「相互信頼に基づく世界貿易(交易)」に参加すべきでは無かったのだ。

トランプ政権が大きな痛みを伴い、冷戦に発展する可能性のある「米中貿易戦争」に踏み切ったのも、1978年の米中共同声明による国交正常化から2001年のWTO加盟を経て現在に至るまで「自由貿易の恩恵を受けながら、自国の門戸は閉ざし続ける不誠実な態度」をとり続ける共産党中国に対する堪忍袋の緒が切れたからである。

口火を切ったのはトランプ氏だが、共産党中国に対する怒りは何十年にもわたって米国の企業経営者や国民が蓄積してきたものである。

特に、米国が警戒しているのは、共産党中国による技術の盗用である。

米ソが対立した第1次冷戦で、KGBが必死になって入手したのは、米国の先端技術情報、特に軍事に関するものであり、その大量の盗用情報なしには、ソ連は米国と軍事技術で争うことなどできなかったといわれる。

事実、KGB在籍の二重スパイがフランスの諜報機関にKGBの諜報活動の実態を記した資料を流し、それを詳細に分析したCIAが対抗措置をとった。それにより、先端情報がソ連邦に流入しなくなったことで、ソ連邦の崩壊が早まったとも考えられている。

今回の、貿易戦争でも主要なターゲットはZTEやファーウェイなどの民間企業の皮をかぶった事実上の「スパイ組織」と米国政府が見ているIT企業である。

グローバリズムによって人、物、情報の流れが加速する中で、「ル―ル無用の悪党」が不正を働くことで、グローバリズムが本来目指していた「夢」は、露と消えるのである。

 

奪われた先進国労働者の富

貧富の差の拡大がよく話題になる。確かに、日本人のほとんどが「自分は中流である」と感じていた「1億総中流時代」や、米国民のほとんどが繁栄を謳歌した1950年代、60年代に比べれば、先進国においていわゆる「中間所得層」と呼ばれる人々の数が減少しているのは明らかである。

ここにもグローバリズムの影響が如実に表れている。高額所得層の所得が上昇したのは、米国の経営者あるいはカルロス・ゴーン容疑者などの強欲の影響もあるが、多国籍企業が巨大化して収益が莫大になったせいもある。巨大になった収益の大部分が、特権階級と化した一部の経営者や幹部に集中したのである。

事実、世界中の低賃金労働者と競合する先進国労働者の所得は下降気味である。それに対して、ドル換算の絶対値では低いものの、発展途上国の労働者の賃金は一貫して上昇している。

先進国労働者から奪われた富を、巨大企業の幹部と発展途上国の労働者が分けあっている構図である。