深層レポート「麻生太郎が政治の表舞台から去る日」

地元・福岡で異変が発生
戸坂 弘毅

震災後に反原発を主張するなど自民党内では「異端児」「変人」と見られてきた太郎氏だが、一昨年、外相に抜擢されて一躍「総裁候補」と見做されるようになった。しかし麻生氏は、側近たちを前に「太郎はもっと礼儀や社会常識を身につける必要があるな」と突き放す。

政権内で何かと麻生氏と対立する菅氏が、神奈川県連つながりで太郎氏を可愛がり、総裁候補として推す意向を隠さないことが面白くないのだろう――そう周辺は推察する。ただ太郎氏は、派閥の継承には全く興味を示さず、同派議員たちとの会食さえほとんどしない。

 

麻生派「四分五裂」の可能性

麻生氏は、鈴木善幸元首相の娘である妻の千賀子氏から「早く息子に(議席を)譲ってほしい」と以前からせっつかれているが、一代で築いた大派閥を維持するためにも、少なくとも次期衆院選には立候補する考えといわれる。

その後のプランについて、複数の麻生派幹部は「鈴木善幸元首相の長男で、麻生氏の義弟にあたる鈴木俊一元五輪担当相を派閥の後継者にすることを考えているようだ」と語る。閣僚を2回務め、性格も温厚な鈴木氏であれば、総裁候補とはならずとも、派閥のまとめ役としては座りがいいというのだ。

安倍首相の自民党総裁任期は再来年、2021年の9月まで。このままいけば、「ポスト安倍」の総裁選は麻生氏の引退前に行われる。

もちろん、いまや「麻生再登板」を本気で考える議員は麻生派内でもほぼ皆無だ。「ポスト安倍」政権の下でも影響力を維持するために、次は誰を担ぐべきか――派内には河野氏のほかに首相候補が不在であることから、麻生氏の悩みは深い。

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麻生氏は年明け早々の1月10日、ホテルオークラで岸田文雄氏と会食した。もとは同じ宏池会=旧宮沢派である岸田派との合併による「大宏池会構想」が頓挫してからも、麻生氏は岸田氏と定期的に酒食を共にしている。

それは麻生氏が、次の総裁選で岸田氏を担ぐことを有力な選択肢として考えているからにほかならない。だが、総裁への意欲を隠さない河野氏がそれに反発し、総裁選に出馬する事態になれば、若手を中心に河野氏への支持が派内で広がり、麻生派は四分五裂する可能性が高い。

麻生氏はいま、地元・福岡でも中央政界でも一気に影響力を失いかねない瀬戸際に立たされ、築き上げた党内第2派閥も砂上の楼閣と化しつつある。

傘寿を目前にして、政治家人生の花道を飾ることができるのか――。

(戸坂弘毅・ジャーナリスト、文中一部敬称略)