深層レポート「麻生太郎が政治の表舞台から去る日」

地元・福岡で異変が発生
戸坂 弘毅

県知事選でも、思惑が外れた

一方、今年4月に行われる福岡県知事選でも、地殻変動が起きようとしている。

麻生氏は現在2期目の小川洋知事について、「次の選挙で必ず交代させる」と周辺に繰り返してきた。

かつて麻生内閣で内閣広報官も務めた経産官僚の小川氏を、8年前の県知事選で擁立し当選させたのは、ほかならぬ麻生氏だ。

ところが、保守分裂選挙となった2016年の衆院福岡6区の補欠選挙で、麻生氏が直々に頼んだ応援演説を小川氏が「ドタキャン」する事件が起こる。それ以来、両者の関係は悪化。小川氏が予算陳情で上京しても、麻生氏は面会を一貫して拒否し、福岡県内の各種会合で同席しても目も合わせない関係となった。

麻生氏は「次の選挙で、小川も終わりだ」と「小川下ろし」を規定路線と考えてきた。ところが昨年末から、麻生氏の思惑とは全てが逆に動き始める。

 

自民党福岡県連は12月29日の選対委員会で、県知事選の候補者公募に応じた3人を面接し、元厚生労働官僚の武内和久氏を推薦候補とすることを決めた。

実は麻生氏は、昨年の早い時期から「小川にかわる次の候補者は武内」と内々に決めていた。発表が年末までずれ込んだのは、地元民放の情報番組にコメンテーターとして出演していた武内氏の知名度をさらに上げるため、麻生氏が腹心の選対メンバーらに命じ、決定を引き延ばしたことが背景にあったとみられる。

一方、小川知事は麻生氏と争っても立候補する意向を固め、これに先立つ12月16日、福岡県を訪れた菅義偉官房長官に「不退転の決意で知事選に臨む」と伝えた。

このとき、県連関係者は「麻生氏と犬猿の仲である菅氏に支援を求めるなんて、完全に麻生氏への宣戦布告だ」と漏らしていた。

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公明党は1月末現在も態度を表明していないものの、前出の創価学会・山本氏は昨年末、「とくに失点もない現職知事を、麻生氏の私怨だけを理由に降ろすなどあり得ない。小川知事を支援する」と周辺に明言。これを聞いた小川氏は、さらに意を強くした。

麻生氏に近い地元財界人は、この事態について「(麻生氏は)自民党が良い候補者を出せば公明党も乗ってくるし、そうなれば小川知事も自ら出馬を断念すると思っていたようだ」と漏らす。

風向きも、麻生氏にとって厳しくなっている。

自民党本部が1月12日からの3日間に行った世論調査では、小川支持が57%に対して、武内支持はわずか11%。麻生氏側近の大家敏志副幹事長(参院議員)らは「現時点では単なる知名度調査にすぎない」と強気の姿勢を崩さないが、県内の自民党国会議員は、二階派の武田良太副幹事長を筆頭に約半数は小川氏を支援する方向だ。