〔photo〕gettyimages
# 米中貿易戦争 # 中国経済

中国・習近平が恐れている、米中貿易戦争より「ヤバすぎる現実」

中国はなぜ譲歩せざるをえなかったのか
1月末に米中が閣僚級貿易協議を開催するにあたって、中国の習近平・国家主席がアメリカ・トランプ政権に対して譲歩の姿勢を見せ始めた。互いに一歩も譲らないにらみ合いから一転、現実路線へ歩み出したかのようにも見えるが、背景には中国側のある深刻な事情が隠されているという。習近平は米中貿易戦争より恐れていることがある――そう指摘するトップアナリストの中原圭介氏による米中最前線レポート!
 

習近平がいちばん恐れていること

中国の習近平が米中貿易摩擦で大幅な譲歩をしてでも合意したい理由は、中国共産党が自国も含めて様々な国々の歴史をよく研究しているからです。

「歴史は繰り返す」と言われるように、有史以来、人間は同じような過ちを何度も繰り返してきました。人間の過去の過ちを振り返り、今の時代の状況に照らし合わせれば、どのように物事が進んで行くのか、または、どのように物事を進めるべきかを考えるのに非常に役に立ちます。

そのことは、長い歴史上、世界のあちこちで誕生しては消えていった帝国や王朝の歴史が物語っています。その典型的な例のひとつが、中国の歴代統一王朝の歴史、すなわち「秦」「漢」「隋」「唐」「宋」「元」「明」「清」の皇帝が治める統一国家の歴史です。

中国の統一国家の歴史を俯瞰すると、習近平が何をいちばん恐れているのか、容易に知ることができます。それでは、おおまかな歴史のおさらいになりますが、中国の歴代王朝の興亡史を一つ一つ見ていきましょう。

〔photo〕iStock

「陳勝・呉広の乱」という農民反乱

「秦」が初めて中国を統一するまでは、中国大陸は多くの国に分かれていて、それぞれの国を「王」が支配していました。しかし、秦が中国全土を統一して広大な国土を治める政権が誕生すると、王に代わる新しい称号が必要になり、秦王は歴史上初めて「皇帝」を名乗るようになりました。ですから、秦の始皇帝以降、中国全土の支配者には皇帝の称号が付けられるようになったのです。

その「秦」が滅ぶきっかけとなったのは、「陳勝・呉広の乱」という農民反乱です。秦は思想の統制や権力の絶対化を急速に推し進めたのに加え、万里の長城や宮殿の建設、河川の整備工事などで多くの民衆の犠牲を伴い、民衆の不満、不安、恐怖が鬱積していました。そんななかで陳勝・呉広の乱が口火となり、中国全土にまたたく間に農民反乱が広がっていったのです。

秦に次ぎ中国全土を統一したのは、陳勝・呉広の乱を機に挙兵した劉邦です。彼はライバルである楚の武将・項羽を激闘の末に破り、「漢」を建国します。ところがこの漢では、政治腐敗による農民への重税が原因となり、「黄巾の乱」という農民反乱が起こります。結局はこの反乱が引き金となり、各地で反乱が相次ぎ、漢は滅亡してしまいます。黄巾の乱は宗教結社である太平道の創始者・張角によって起こされた宗教的な農民反乱でありました。