大坂なおみと大谷翔平が示す「上向き思考」という新しい可能性

「プラス思考」は間違いだった…?
平野 秀典 プロフィール

プラスもマイナスも調和させる絶対積極とは

大谷翔平選手が影響を受けた中村天風とは、東郷平八郎、宇野千代、ロックフェラー三世、双葉山、藤平光一、尾崎行雄、松下幸之助など、歴史のスーパースターがこぞって師事し、現代でも、稲盛和夫、澤田秀雄、松岡修造、市川海老蔵などから強く支持を受ける、日本自己啓発最高峰の哲人です。

2019年はちょうど没後50年、教えを伝え始めて100年という記念すべき年になります。

 

天風哲学は、「プラス思考」「前向き思考」と説明されることが多いようですが、本来のアプローチは、前向きよりも上向きの方向性を持つ「絶対積極」にありました。

天風講演録の中にも、「尊さ」や「気高さ」や「宇宙」といった上向きの言葉が数多く使われています。

中村天風の言う積極とは、消極やマイナスに相対した二元的なプラス思考ではなく、プラスもマイナスも超えた人間本来の状態のことをいいます。

たとえ身に病があっても、心まで病ますまい。
たとえ運命に非なるものがあっても、心まで悩ますまい。

この力強い言葉にも表現されているように、天風哲学では、心と体を「命を使うための大切な道具」であるとし、自分を客観視し、心を演出する実践方法を教えています。

たとえば、他人の言動に影響されて心がマイナスに傾いたとき、気分が悪いのは、その原因をつくった他人のせいだと普通は思います。皆そうだと考えます。

しかし、人生は多数決ではないと天風は言います。

他人に体を勝手に動かされると人は怒るが、他人に心を勝手に動かされることには寛容な人が多い。

心がマイナスに傾けば、健康にも悪い影響が出ることは多くの人が知っています。

心がマイナスに傾いた状態で、いいパフォーマンスができるはずはなく、出せるはずの成果を逃したり、人間関係を壊してしまうこともあります。

「健全な身体に健全な心が宿る」という言葉がありますが、それでは、身体が健康でなくなったら心も健康でなくなってしまう、と天風は言いました。

「健全な心に健全な身体が宿る」が正しいと。

photo by iStock

感情的な人から感動的な人へ

心を使う主人になるために必要な能力は、「集中力」です。それは、外の対象物へ向かう力(=執着)ではなく、自分へ集中する力。

外に向かった集中力は、興味や関心があるものに対しては、誰もが普通に使っています。一流のアスリートやアーティストは、自分の心と体を最高の道具として使うために、外側ではなく内側のメンタリティへ集中力を発揮しています。

自分の内側への集中力がないと、心に使われて感情的な反応をしてしまいます。

感情的な人と感動的な人はどう違うのでしょうか?

・感情的な人とは一緒にいたくありませんが、感動的な人とはいつまでも一緒にいたくなります。

・感情的な人の話は聞きたくありませんが、感動的な人の話はいつまでも聞いていたくなります。

・感情的な人といると疲れますが、感動的な人といると勇気や気づきをもらい元気になれます。

心に使われると感情的な人になり、心を使うと感動的な人になれます。

自分の心に集中していれば、外側のマイナスの出来事に消極的に反応するのではなく、同時に存在している積極的な要素(メリットや恩恵や愛情)に気づくことでニュートラルに戻り、感動や感謝、至福というハッピーエンドにつながるストーリーが見えてくるのです。

人の喜びをわが心の喜びとする、中村天風の言う「大欲」を炎と燃やしながら生きることで、人間は誰もが世の中の進化と向上に貢献する感動的な人になれます。

人を輝かせ、その灯で自分が輝く人となる人生こそ、本物の意識が高い生き方なのです。