「待機児童ゼロ」を最優先した結果、日本の保育は問題だらけになった

片山大介・参議院議員インタビュー
小林 美希 プロフィール

「待機児童ゼロ」を最優先した結果…

小林:弾力運用という制度はどうしたら良いのでしょうか。

片山:処遇改善費が出ているのに、人件費の大元が流用されているのでは本末転倒。あるべき姿として人件費が使われないのであれば、あるべき姿にするために縛りをかける。弾力運用そのものについて考え直すべきではないでしょうか。

小林:ほかにも保育分野で規制緩和が進んでいます。待機児童解消のために急ピッチで保育所が作られると保育士確保が困難になり、保育士の配置基準が事実上、規制緩和されています。

 

片山:自己責任を求める一般的な規制緩和を保育に当てはめるべきではありません。保育士の配置基準を緩めて待機児童の数を減らしたいのが大前提に見えます。その結果、ゼロになったら問題が解決するわけではなく、本当に良い保育を提供できるか、質の議論に及んでいない。

保育者の全てが保育士でなくても良いこともありますが、保育士以外が実際にどこまでスキルがあるのか。最低限守ることは、一定の研修を受けるだけでいいのか。無資格者がわずかばかりの研修を受けただけでは、預ける側の親は心配でしょう。

そして、処遇改善といっても加算方式はいつまで続くか分からないという経営側の不安から処遇改善に躊躇する実態もあります。公定価格を引き上げ、同時に配置基準も引き上げるという、発想の転換が必要です。

小林:2016年度からは企業主導型保育所という、税金を財源とせず所管も内閣府という新たなタイプの保育施設がスタートしました。企業主導型保育所は、配置基準の5割を保育士で満たせば良い制度となるなど、基準が緩和されています。昨年11月には東京都世田谷区で企業主導型保育所が急に休園し、波紋を広げました。

片山:企業主導型こそ待機児童対策で急ごしらえしたところもあり、今、いろいろな形で歪が生じています。

実際のニーズに合った形で作っているか不明確で、結果、4割も定員割れしてしまっています。素人の事業者が保育ノウハウもないのに、多額の助成金を目当てに参入してしまい、もっと大きな問題が出てくる可能性ある。

保育については、国よりも市町村がよくわかっているのですから、市町村が施設の設置や監査について、きちんと関与すべきです。

こうした問題は全て「待機児童ゼロ」ということが最優先事項になっているから起こってしまう。

有権者にとって分かりやすい政策に舵を切って、現場の声や保育のありかたが二の次になっている。待機児童ゼロになれば政治の評価が上がるという意識から脱する時期がきているのではないでしょうか。