「待機児童ゼロ」を最優先した結果、日本の保育は問題だらけになった

片山大介・参議院議員インタビュー
小林 美希 プロフィール

「適正な給与水準」の曖昧さ

小林:安倍晋三政権は、保育士の処遇改善に力を入れてきました。これと「委託費の弾力運用」は矛盾しないでしょうか。

片山:安倍政権は「財政が厳しいなかで処遇改善のための加算を作った」と強調していますが、弾力運用によって土台が抜けています。

保育士の処遇改善を重要課題としているにもかかわらず、実際に人件費分がきちんと使われていないということを深刻に考えなければなりません。

公定価格で示された年収額を守ってもらうことのほうが、よほど処遇改善になります。そもそも論に戻さなければいけない。

弾力運用ができる前提条件には「適正な給与水準」であることなどが通知で示されていますが、実際のところは、なし崩しで野放図になっている。

委託費のもとは税金です。税金の使い道として国が考えたように使われていないならば、実態を調査する。そして、委託費の流用の仕方が目に余るようであれば、弾力運用をやめさせなければならないでしょう。

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小林:そもそも、適正な給与水準というのが曖昧です。

片山:国会答弁でも逃げ道にされました。民間の給与体系に行政が口を挟めないという理由づけもされますが、適正な給与水準を国が示すことは理論的には可能なはず。地方公務員給与や地域ごとの最低賃金をきちんと調べて保育士の地域別の賃金モデルを示し、賃金水準を守らせるべきです。

監査があるといっても、弾力運用についてきちんとチェックされていない。一定の人件費比率を下回ればモラルハザードを起こしている可能性があるとして、個別調査したうえで弾力運用を停止するなどの縛りが必要です。

 

小林:約1年前の国会で、政府側が弾力運用について「検討の余地がある」と理解を示しました。

その結果、18年3月末の子ども子育て支援法の改正時には参議院の付帯決議で「処遇改善を講じるに当たっては、保育所等における人件費の運用実態等について十分な調査、検証を行うこと」という方向がつけられました。附帯決議は法的拘束力がないものの、無視できない存在です。

片山:今年度、内閣府が弾力運用に関する調査を始めたと聞いています。これまで放置されていた委託費の弾力運用について内閣府も問題意識を持ち始めたことは一歩前進です。公定価格で算出されている額が給与に反映されない実態をもっと多くの人に知ってもらいたい。

保育士も保護者も、なんでこんなに保育に回るお金が少ないのかと諦めていますが、本当は、もっと給与がもらえる権利があるのに違うことにお金が回っていると気づいてもらえるよう、大きな動きにしたいと思っています。