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「待機児童ゼロ」を最優先した結果、日本の保育は問題だらけになった

片山大介・参議院議員インタビュー

「ブラック保育所」が生まれる構造

待機児童対策のため急ピッチで保育所が作られるなか、保育士が低賃金で長時間労働という“ブラック保育所”の存在が目立っている。その構造的な問題はどこにあるのか。

筆者が問題視するのは国が認める「委託費の弾力運用」という制度だ。

認可保育所には、委託費と呼ばれる運営費用が市区町村を通して支払われている。その内訳は「人件費」「事業費」「管理費」の3つ。

「事業費」は、給食費や日々の保育に必要な材料を購入したりするためのものがメインとなり、「管理費」は職員の福利厚生費や土地建物の賃借料、業務委託費など。

もともと、「人件費は人件費に」「事業費は事業費に」「管理費は管理費に」という使途制限がかけられていたが、それを規制緩和して相互に流用できるようになったのが前述した「委託費の弾力運用」となる。

問題なのは、弾力運用が3つの費用の相互流用だけでなく、同一法人が運営する他の保育所への流用、新規施設の開設費用への流用も認めていることだ。

本来は8割かけられるはずの人件費が抑え込まれ、3〜4割程度しか人件費比率がかけられないブラック保育所が散見されることに、警鐘を鳴らさなければならない。

 

参議院の片山大介議員(日本維新の会)は、委託費の弾力運用について、いち早く国会で取り上げてきた。

2017年3月9日の厚生労働委員会で、人件費比率の低い保育所があることに着目し、委託費の大部分を占める人件費が流用されている問題を指摘。同年5月30日の厚生労働委員会でも「委託費の弾力運用」そのものを問題視した。

2018年2月1日の参議院予算委員会では、片山議員が保育者の人件費比率が著しく低いことを数字で示した。

独自調査の結果、都内の700を超える認可保育所の「保育従事者の人件費比率」の平均が社会福祉法人で55%、株式会社で42%だということから人件費の流用幅が大きく、「弾力運用について縛りをかけるべきだ」と政府に詰め寄った。

国会で「委託費の弾力運用」をいち早く取り上げた片山大介・参議院議員

保育士の平均年収は約315万円

小林:「委託費の弾力運用」の問題点を、どう捉えますか。

片山:保育所に支払われる委託費は人件費が8割を占めると国は想定しています。一方で、これまで委託費がどのように使われているか実態が把握されていませんでした。

実際はどうかとデータをとると、そうならない。3割、4割という例もあります。その大きな原因となるのは、弾力運用で人件費が他に使われているからです。保育士の待遇が悪いという現場からの声と、人件費が流用されている状況が合致します。

保育所運営にかかる費用については、何にいくらかかるかという積み上げ方式で計算されています。だから、本来は使い切る性格のものです。

しかし、同一法人が運営する他の保育所はもちろん介護施設への流用なども国が通知で認めているため、好き勝手に使えるようになってしまっています。

小林:国は保育士の人件費の額を示しており、保育士の年収は平均で約380万円とされています(2017年度)。それなのに、内閣府の「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」(17年度)では、私立で働く保育士の平均年収は約315万円という結果でした。

片山:もし想定通りの年収380万であっても、決して高い賃金水準とはいえません。平均年収の実績が315万円というのは低すぎると、内閣府だってわかっているはず。

にもかかわらず、国会の答弁では「配置基準以上の保育士を雇っているから一人当たりの賃金が安くなる」という説明をする。それならば、配置基準より多く雇っているのはなぜかを考えなければいけない。配置基準ギリギリでは、きちんと保育ができないと現場が判断しているからでしょう。

配置基準の引き上げを考え、それに見合った財源をつける。そして、委託費を払って、あとは“ご自由に”ではいけない。今のままだと“ブラック保育園”が増えてしまうだけではないでしょうか。