Photo by Patrick Pierre on Unsplash

「うつ病をアプリで発見」実用化へ!巨大企業、名門大学が続々参入中

スマホが依存症を警告してくれる
米国の10代の若者のあいだでは自殺率が上昇し、うつ病が増えている。こうした状況をうけて、研究者らは興味をそそる疑問を提起した。

テクノロジー世代が抱く不安の一因として一部で非難されている、まさにそのデバイスを使って、不安を検出できるのではないか──というのだ。

こうして、ユーザーに対してメンタルヘルス上の危機を警告するスマートフォンアプリの開発ブームが始まった。

いってみれば、「スマートフォン精神医学」、あるいは「児童心理学2.0」の幕開けだ。

スマホの履歴から「バイオマーカー」を探れ!

スマートフォンの長時間使用と、10代の若者のメンタルヘルスの悪化を結びつける研究はいくつもある。

しかし10代の若者は、インスタグラムやスナップチャットをどんどんスクロールしたり、メールを打ったり、ユーチューブの動画を見たりしているときには、精神面での健康のヒントになるような「デジタル上の足跡」も残している。

予備的な研究では、タイピング速度や声のトーン、言葉の選び方、家にいる頻度などの変化は、不調のシグナルになることがわかっている。

米国国立精神衛生研究所の元所長で、現在はこの「スマートフォン精神医学ムーブメント」の先頭に立つトーマス・インセル博士は、スマートフォンで検出できるうつ病の「バイオマーカー」は1000種類にもなるだろうとしている。

現在、うつ病や自傷行為を未然に予測することを目指した、人工知能による実験的アプリがいくつもテスト中だ。

アプリ開発者で、精神医学と生物工学を専門とするイリノイ大学シカゴ校のアレックス・リュウ准教授は、「私たちが追跡しているのは、ヒトの脳の鼓動にあたるものです」と語る。

だがそれは、現段階では「目標」にとどまっている。というのは、解決すべき技術的および倫理的な問題点がいくつかあるからだ。プライバシーの問題があるし、そこまで細かく監視することを子どもたちに許可してもらわねばならない。

開発者たちは、実証済みの気分検知アプリが市販されるようになるまでには、何十年も先ではないにしても、数年はかかるとしている。

オレゴン大学の心理学者のニック・アレンは、「こういうものに『ぞっとする』と感じる人が多い」のは、テクノロジー業界がオンライン上の行動を営利目的でひそかに追跡しているせいだと語る。

アレン氏は、スマートフォンを精神疾患の検出手段として使用するには、ユーザーにアプリのインストールについて説明し、同意を得ることが必要だと指摘。さらに「ユーザーはいつでもその同意を取り消すことができる」としている。

アレン氏が開発に加わっているアプリは、自殺を試みたことのある若者を対象にしたテストを実施中だ。

「何がシグナルで、何がノイズかを理解する。つまり、人々がスマートフォンに蓄積している大量のデータのうち、どれがメンタルヘルスの危機の兆候なのかを知る。これが、現時点で一番難しいことだ」

フェイスブックもAIで支援するが…

米国では、10代の若者のうち約300万人がうつ病に苦しんでいて、その割合はこの10年で増加している。米国政府のデータによれば、2017年には12歳から17歳の13%がうつ病にかかっており、2010年の8%から増加している。

大学生に相当する歳のアメリカ人では、10人に1人がうつ病だ。

自殺は、10歳から34歳までの死亡原因の第2位に上昇している。10代の少女の自殺率は、2007年から2015年のあいだに2倍になり、10万人に5人の割合に増加した。少年では30%増加し、10万人に14人の割合にまで達している。

最近の研究では、同時期にみられたスマートフォン利用の増加が一因である可能性が高いとしている。

そして、精神的な病気を抱える人々が治療を受けるのは、「危機状態に陥っていて、その病気のかなり後期になってから」になるのが一般的だとインセル博士は語る。

「私たちは、最初の兆候を(客観的な方法で)特定する手法を開発したい」