ストレッチは「歩く」をサポートする

ストレッチの効果として第三に考えられるのは、関節に関するものだ。

ストレッチで筋肉の柔軟性が回復すると、関節の動ける範囲である可動域が広がる。それが日常生活をアクティブにしてくれる。もっとも身近な例は歩行だ。

ストレッチを行うと歩行に関わる股関節や足関節(足首)の可動域が広がり、歩くスピードをペースアップできる。

20人の高齢者女性を対象とした研究では、股関節や足首のストレッチプログラムを行った群とそうでない群を比べると、ストレッチ群の方が歩幅と歩くスピード、歩行パフォーマンスが有意に向上した(Stretching exercise program improves gait in the elderly. Gerontology. 2009;55(6):614-20)。

歩くペースがあがると心臓病による死亡率も下げられる。

1994〜2008年までのイギリスとスコットランドにおける5万人以上のデータを解析した研究によると、歩くペースが速い人の方が心臓病による死亡率は低いことがわかった(Self-rated walking pace and all-cause, cardiovascular disease and cancer mortality: individual participant pooled analysis of 50 225 walkers from 11 population British cohorts.BJSM,June 2018 Volume52-12)。歩行で血液の循環がよくなり、血管を広げるNOなどが分泌されて血圧が下がるからだろう。

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習慣にしたいストレッチ種目とは

では、老後のコストを減らすには、どのようなストレッチが有効なのだろう。

肩や首の凝りに悩んでいる人には、首・背中の僧帽筋、首の板状筋などのストレッチがいい。これらはストレスで固まりやすい筋肉でもある。

腰部の柔軟性を回復させて動脈硬化のリスクを下げるには、お腹の腹直筋、背中・わき腹の広背筋と腹斜筋群、お尻の大臀筋や中臀筋などのストレッチが欠かせない。

歩行の機能を上げるには、股関節まわりの腸腰筋、お尻の大臀筋や中臀筋、ふくらはぎの下腿三頭筋、すねの前脛骨筋などのストレッチがいい。

なおストレッチには守りたい基本的なルールがある。それを最後に紹介しよう。

【ストレッチの基本ルール】
1 運動後や入浴後など、体が温まっている状態で行う。
2 息をゆっくり吐きながら、反動を使わずに静かに筋肉を伸ばす。
3 痛気持ちいいポイントで静止。深い呼吸をしながら20〜30秒保つ。
4 強い痛みを感じたり、震えが来たりするまで無理に伸ばさない。
5 硬いところはできれば毎日、最低週5日以上行う。

ここで紹介したストレッチの他にも、気になる部位・伸ばしたい部位別に、柔軟性のレベルに応じて選べるストレッチが全75ポーズ紹介されているのが、『みんなのストレッチ』。腰痛・肩凝り・膝の痛みといった症状別インデックスもあり、自分に必要なストレッチがわかる。すべてのストレッチに、二次元バーコードからアクセスできる無料動画付き。監修者の中野ジェームズ修一氏は、NHK「趣味どきっ!」でストレッチ講座番組の講師を2年連続担当したストレッチの第一人者であり、青山大学駅伝チームのフィジカルトレーナーとして箱根駅伝4連覇を支えてきた立役者。