ストレッチは「血管死」を予防する

ストレッチの効果として第一に考えられるのは、血管に関するものだ。

そもそも臓器や細胞に血液で酸素と栄養素を運ぶ血管こそは、人体でもっとも重要なインフラといえる。人体の血管をすべてつなぐとおよそ9万km、地球2周半分にも達する。カナダ生まれの偉大な内科医ウイリアム・オスラーは「人は血管とともに老いる」という名言を残したが、血管を若く保つことは健康作りの土台である。

日本人の死因の1位はがん(悪性新生物)だが、2位は心疾患(心臓病)であり、3位は脳血管疾患(脳卒中)。心臓病と脳卒中はいずれも血管の病気であり、これらによる死亡は「血管死」と呼ばれる。

血管死の背景にあるのは、動脈硬化。心臓から末梢へ血液を運ぶ動脈が柔軟性を失って硬く狭くなり、血栓と呼ばれる血の固まりが詰まりやすくなった状態である。動脈が心臓で詰まると心臓病、脳で詰まると脳卒中に陥る。

血管死はもちろん怖いが、たとえ助かったとしても手術を繰り返したり、後遺症が残ったりすると、医療費の負担が重くのしかかる。

その憂いを減らしてくれるのが、ストレッチなのだ。

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ストレッチが血管によい2つの理由

ストレッチがなぜ血管によいのか。理由は2つ考えられる。

一つ目はNO(一酸化窒素)の生成によるもの。

硬くなった筋肉では血管も圧迫されて流れが悪くなる。それは肩凝りや腰痛の一因。ストレッチで筋肉を伸ばすと、血管は圧迫から解放されて血液の流れが良くなる。それと共に、血管の壁を作る内皮細胞から分泌されるNOが増えてくる。このNOには、血管を緩めて広げる働きがあり、血圧を下げて動脈硬化のリスクを軽減する。

二つ目は交感神経の抑制作用によるもの。

体の機能を調整している自律神経には、活動的に整える交感神経と、休息へ向かわせる副交感神経がある。交感神経と副交感神経の働きは対照的。血管に関しては交感神経は血管を縮め、血圧を上げて動脈硬化を進める。逆に副交感神経は血管を緩めて血圧を下げ、動脈硬化を抑制してくれる。

ストレス下では交感神経が優位になりやすい。ストレスフルな現代人は交感神経がオンになったままであり、血管に大きな負担をかけている。

吐く息を意識して、深い呼吸を行いながら筋肉を緩めるストレッチは交感神経をオフにし、血管を緩める副交感神経を優位にして血管をいたわってくれる。