「消臭力」を女子トイレに持ち運ばせる“感覚的消臭法”って何だ?

エステーに訊く「商品開発」の極意
リケラボ プロフィール

工程といっても、さまざまなことを同時進行するケースが多いです。

たとえば、コンセプトやスペック、大きさ、中身の成分、パッケージなど、製品の姿かたちを決めるところから、製造部門の人に相談しながら生産ラインを組んでもらったり、試作をしてもらったり。

工場で製造すると、ラボとは違う出来になってしまうことも珍しくないため、そのときは問題を修正しながら完成に近づけていきます。

また、薬事法などの規制に基づきながら各部署に表示を確認したりするのも重要な工程のひとつです。

噴射量チェック1回の噴射量にばらつきがないかチェックしているところ。ちなみに、ミストの広がり方や細かさも何パターンか試したうえで現在のものに決まったとのこと。ピンポイントすぎず、広がりすぎない絶妙なミストになるものを選んだのだとか

──中野さんは、すべての工程で関係各所とのやりとりを担っているということですよね。これだけたくさんのことを同時に考えながら、1年間という短い期間で製品をつくるのはとても大変なことだと思います。

そうですね、私もこの仕事に就くまでは、もっと長い時間をかけてひとつの商品ができあがるのだと思っていました。

ただ、製品の開発は、かけた年数のぶんだけいい製品ができるかというと、そうとも限らないんです。ビジネスにはタイミングも重要なので、慌ただしいですが1年間で開発できてよかったと思っています。

スケジュールをきちんと管理して進行していくことは、開発担当者の重要な役割です。各担当者や上層部に何か判断を仰ぐ際にもスピーディーに決断してもらえるよう、できる限りこちらで考えて選択肢を絞り込んでおくことなどを心がけていました。

また、気持ちの面でちょっとした障害ができると、連絡がスムーズにいかなくなってしまうこともあるため、多少思うようにいかないことがあっても、必要以上に落ち込まないことも大切です。

まだ発売したばかりなので(取材日は2018年10月)、お客さまからの声が入ってくるのはこれからになりますが、関係各所では評判が良いと聞いています。「消臭剤っぽくないけれど、きちんと消臭してくれる」ということがお客さまにも伝わればうれしいですね。

「研究開発」と「商品開発」の違い

──中野さんはエステーに入社されてからずっと商品開発を担当されているのですか?

はい、そうです。新卒入社した食品会社では健康食品の商品開発をやっていたのですが、ホームケア用品の商品開発をやりたいと考えてエステーに転職しました。

私は大学院では食品科学を研究していて、周囲は研究職志望の友人がほとんどでした。でも、私は身近な商品をつくる仕事がしたくて、商品開発をやりたいとずっと思っていたんです。

──「研究開発」と「商品開発」の違いを教えていただけますか?

エステーの場合ですが、今回の“気くばり女子のトイレミスト”でいうと、中身の成分を考えて処方を決めるのが「研究開発」の仕事。パッケージなど外側も含めて全体の形作りに携わるのが「商品開発」の仕事です。

コスト面や新しさ、生産のしやすさなどさまざまなことに配慮しながら、総合的に一番良いものにできるよう仕様を決めていきます。

たとえば、今回のミストについて言うと、容器を細くすることで、内容量との兼ね合いがあったり、生産の過程に影響を与えたりする可能性もあったり……「ひとつを立てるとどれかひとつが立たない」ことが難しかったです。

でも数ミリの違いが、“消臭剤っぽさ”が現れてしまうかどうかを左右するので、そこは妥協してはいけないポイントだと考え、「絶対にこの細さにしよう」とこだわりました。

それから、会議のための資料を作るなど、商品開発の仕事には、机に向かう仕事が意外と多いことも知っておいていただくといいかもしれません。

資料作成にはコツがあって、情報を詰め込みすぎると伝わりにくくなります。頑張って出した実験データは全部見せたくなってしまいがちですが、特に経営層に伝えるには、必要最低限の重要な情報にフォーカスして伝えることが大切だと日々実感しています。

特に若いうちは作り込みすぎる前に、上司に中間チェックしてもらうと、方向性が間違ってしまった時もすぐに軌道修正できるのでいいと思います。

──中野さんが「商品開発」の仕事をするうえで大切にされていることは何ですか?

相手のいいところを見つけるようにすることを心掛けています。

アイディアが素晴らしくても、生産やコスト面で難しかったりすると、賛成してもらえないこともあります。そんなとき、その人がどういう背景でその意見を言っているのかを考えたり、良い面を見ていくことでコミュニケーションがスムーズになるんです。

どんな仕事にも当てはまるかもしれませんが、開発の仕事では特に大切なことだと考えています。

──最後に、理系の学生や若手社会人の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

研究テーマや担当する仕事は、必ずしも自分が望むものを選べるとは限りませんよね。自分の思い通りの仕事が与えられなかったとき、つい周りと比べて「あのテーマのほうがよかったのに」という気持ちになってしまうこともあるかと思います。

でも、なるべくそういうことは考えずに、目の前にあることをまずはやってみることが大切なのかなと思います。大変な仕事にあたった時も、周りと比べずひたすら頑張ってみることで、結果としてそれが良い経験になったと実感できることがあるはずですよ。

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら