女性警察官が、警察を辞めてマンガ家になった理由

交番漫画『ハコヅメ』をご存じですか
モーニング編集部 プロフィール

マンガがない家で育った

── 泰さんは、どんなマンガを読んで育ったんですか?

泰 それが、家にマンガがなかったんですよ。私の父は、知能指数が140ある変わり者で。でも仕事にはそれをまったく生かさず、ドストエフスキーの小説なんかを読んで、読書だけに知能を使っていたんですよ。その父が連帯保証人になりまくって、もう笑っちゃうくらい貧乏だったんです。だからマンガが買えなくて。

──マンガみたいな話ですね。

 そうですね。絵本もあまりなかったので、私が寝る前に自分で即興で作った話をきょうだいにしゃべって、それでなんとかエンタメ欲をしのいでたという感じですね。唯一買ってもらったマンガが『まんが日本の歴史』で、何回も繰り返して読んでました。今はもちろん本を買えるくらいのお金はあるんですけど、お金がなかった時代の感覚がずっと染みついているので、表紙や帯のあおり文句から中身を想像して、それだけやったら帰るんです。変ですかね(笑)。

──貧乏だった頃の習慣が、結果的に想像力を鍛えるトレーニングになっていると。

 買って読むよりも、むしろそっちのほうが好きなんですよね。

──ストーリーはともかくとして、マンガの絵を描く経験はどうやって積んだんですか?

 実は、マンガを描いた経験はそれまで全然なかったんですよ。

──じゃあ編集部に投稿した1ページマンガが、生まれて初めてのマンガ。

 そうです。捜査の仕事で似顔絵を描いていたので大丈夫かなと思っていたんですけど、編集部に投稿したら「絵が下手だ」と言われて、そこから練習しましたね。

──でもマンガを描くのは、ストーリーや絵以外にもコマ割りみたいな要素もありますよね。

 編集さんから「マンガの描き方」みたいな本をもらったので、それを読んで勉強しました。

 

──1ページマンガを投稿してからの成長スピードがものすごく早いですね。編集部としては、初投稿の時点で連載まで見据えていた?

担当編集 最初に送られてきた1ページずつのマンガを見たときに、「これは本職じゃないと描けない話だな」と思ったんですね。それで「代原」(正規の掲載作が落ちたときに代わりに載せるマンガ)として何本か描いてもらうことにしたんですけど、お願いした2日後に10本くらいネームが送られてきて。普通の若者のマンガ家志望者とは、スピードも量も質も全然違った。

そこで初めて「これは連載いけるんじゃないか?」と思って、「育休中に描きだめしてやってみましょう」とお願いしたんです。そしたら泰さん、その2週間後にマンガに専念するため警察を辞めてしまったんですよ。事後報告で。

 だって、辞めるって言ったら止められると思ったので。

担当編集 そりゃ止めますよ! 成長スピードも決断もとにかく早い人ですね(笑)。

──今でも連載は続いているわけですけど、描きたいエピソードはまだまだあるんですか?

 はい。たくさん描きたいものがあって、打ち切られる前に全部詰め込みたいと思っているので、いつもネームがぎっしりになってますね(笑)。

担当編集 いつも「詰め込みすぎです」と言ってるんですよ。3話分のネタを1話の中でやろうとしてるから(笑)。

 とにかく打ち切りにならないように、これからも頑張って描いていきますので。

取材・文/前田隆弘

※本記事は2018年5月4日に公開されたインタビューを再掲載したものです。

(現代ビジネスでも連載開始!第一話はこちらから→https://comic-days.com/episode/10834108156629726452