女性警察官が、警察を辞めてマンガ家になった理由

交番漫画『ハコヅメ』をご存じですか
モーニング編集部 プロフィール

女性警察官が経験する「トイレ問題」

──今までも警察官が出てくるマンガはありましたけど、『ハコヅメ』には小さなリアリティがたくさん詰め込まれていると感じます。たとえば山狩り(犯人を捕まえるために山などを徹底的に捜索すること)に行く話で、「女性警察官はトイレに行けない」というシーンが出てきますよね。今まで全然気づかなかった視点だったんですけど、もしかして現役の男性警察官でもまだ気づいてない人がいるんじゃないでしょうか?

 います。だから幹部には声を大にして言いたいです。「トイレに行きづらい」という問題は山狩りだけじゃなく、交番勤務でもそうなんですよ。腰に拳銃を吊っているので、気軽には取り外せないんですね。

──男性みたいに、チャック開けてパッと用を足すことができない。

 そうです。公衆トイレにも行けないですね。

──じゃあ山狩りに限らず、勤務中は基本的にあまり水分を取らない?

 私はそうしていました。忙しい交番だったので。

──パトロールみたいに、交番の外に出かけたときにトイレに行きたくなったらどうするんですか? コンビニで借りる?

 行かないです。交番に帰るまで我慢します。拳銃があるので、民間の施設では絶対外さないようにしていました。何か落としたときは、もう取り返しがつかないですから。

 

──そうも言ってられないほど尿意が切羽詰まったときは……。

 だったら、膀胱を壊したほうがいいと思ってました。

──すごい話ですね。でも、そういう話は女性警察官の側から言わないと、おそらく男性警察官は気づかないままなんですよね?

 今は女性警察官の先輩方の階級が上がってきたので、そういうことに気を遣える男性警察官も増えてきたと思います。でも忙しいときだと、そういう気遣いは抜けちゃうんですよね。やっぱり事件が優先なので。だから結局はこっちの体を鍛えるという対策で、なんとかしてました(笑)。

──尿意を我慢する力って、鍛えられるものなんですか?

 いや、別にならないですね。膀胱を痛めて終わりです。

泥棒に教えてもらった「ルールを守る意味」

──安全教室の話で、「なぜルールを守るのか」について子供たちに教えるシーンは、とても明快で納得がいくものでした。ルールを守らない人がいるということは、まわりに注意する人がいないから。注意する人がいないというのは、すなわち泥棒をしやすい街だという。

 あれは本当に泥棒から教えてもらったんです。ベテランの刑事さんの補助で取り調べに入ったときに、「この泥棒は前科何十犯のベテランで、いろんなことを知っているから、わからないことを今のうちに聞いておけ」と言われて、「じゃあお願いします」と言って話を聞いて。すごくためになったから、最後に「本当にありがとうございました」とお礼を言って(笑)。

──その泥棒はそれまで前科何十犯もやってきたわけだから、実際そのルールはかなり正しかったということでもあるわけですよね。

 そうなんです。

──逆に言うと、長年の経験でつちかったノウハウを教えてくれるものなんですね。

 やっぱり「刑事と泥棒」という関係であっても「人と人」なので、一人の人間として扱われたことで気を良くして、私の質問に答えてくれたんだと思います。先輩が泥棒のプライドを上手いことくすぐって、そこに新任の警察官を入れて話を聞かせるというのがよかったんでしょうね。