「熱すぎる食事はがんを招く」は本当か…専門家の見解

ほどほどの熱さがよいようで
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肥満の人はさらに注意を

炎症とは本来、体内で起きた異常な状態を元に戻すための「防御反応」である。風邪を引くと熱が出たり、蚊やハチに刺されると赤く腫れたりするのは、病原菌や有害物質を体内から排出し、増殖することを防いでいる証拠でもある。

熱い物を食べた際に、口の中の天井部分や頬の粘膜がはがれたり、口内炎ができたりするのも、防御反応の一種である。

だが、炎症にはこういった「急性」のものに加え、もう一つ、「慢性的」な炎症があることはあまり認識されていない。

先頃、『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か』(講談社ブルーバックス)を上梓した大阪大学大学院特任教授の宮坂昌之氏が解説する。

「通常の炎症は、異物の侵入によって始まり、異物が排除されると、それとともに終わります。しかし、異物の侵入が持続したり、炎症を制御する体内機構が狂ったりすると、炎症反応がダラダラと続きます。これが『慢性炎症』です」

 

つまり、慢性炎症とは何度も炎症が繰り返されることを指す。しかも、このように炎症が常態化した場合、一過性の炎症に比べ、はるかに厄介な事態が体内に起こってくる。

「最近、慢性炎症が、がんや認知症、糖尿病、心筋梗塞、アトピー性皮膚炎など、あらゆる病気の根本的原因となっていることが明らかになってきました。

繰り返し発生する炎症の先に病気があるのです。慢性炎症は『万病のもと』と言っても過言ではありません」(元北里大学理学部教授で、日本細菌学会名誉会員の熊沢義雄氏)

「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」という通り、糖分や脂肪などの栄養分を摂り過ぎると、血管や臓器など様々な組織で炎症が起こる。

「外部からの細菌やウイルスだけではなく、コレステロールや尿酸の結晶など、体内に溜まってくる生体由来の成分も炎症を起こすということが、近年わかってきました。

身体には危険信号を知る何種類もの免疫センサーが備わっていて、生活習慣の乱れなどで身体に溜まる悪い物質も感知しているのです。

自分でよくないとわかっていても生活習慣は容易には変えられません。炎症の原因が取り除かれないのですから、必然的に炎症が慢性化し、様々な病気を引き起こします。その多くはいわゆる生活習慣病といわれるものです」(前出・宮坂氏)

血管が硬くなり、しなやかさを失う「動脈硬化」は誰もが知る生活習慣病の合図だ。これは血管が慢性炎症を起こした結果である。動脈硬化が進めば、血管が詰まり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性が高くなる。

ほかにも膵臓で慢性炎症が起こればインスリンが出にくくなって糖尿病となり、皮膚の炎症が治まらないとアトピー性皮膚炎となる。

冒頭で紹介したように、がんは炎症が続くことによって局所的に組織が傷つき、再生しようとする過程で細胞の遺伝子に突然変異が起こり発生する。

歯周病が続けば口腔がん、胆石による胆のう炎が続けば胆のうがん、炎症性腸疾患から大腸がん、慢性気管支炎から肺がんといった具合に、多くのがんは炎症の「延長線上」に発生する。

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ほぼすべての病気の根本原因となっている慢性炎症だが、恐ろしいのは、自覚症状がほとんどなく、知らず知らずのうちに体内で進行していることにある。

通常の炎症では、「炎症の4兆候」と呼ばれる赤み、腫れ、熱、痛みなどの症状が見られるが、炎症が慢性化すると、こうした目に見えるわかりやすい症状が出にくくなる。

「炎症を起こしている場所では、『炎症性サイトカイン』と呼ばれる何種類ものタンパク質が作られます。この物質は本来、体内に異物が侵入してきたことを知らせる警報の役割を果たしています。

ところが、炎症が長引くとこれらのサイトカインが過剰につくられるのです。すると気がつかないうちに他の場所に飛び火して、全身に炎症が広がっていき、悪影響を及ぼします」(前出・宮坂氏)

さらに前出の熊沢氏は「肥満も全身が慢性炎症を起こしている状態である」と指摘する。

「脂肪細胞は本来、アディポネクチンと呼ばれる善玉ホルモンを分泌するのですが、肥満の人の場合、増えすぎた脂肪が内臓に入り込み、悪玉ホルモンが増加します。

それが血管や様々な臓器に悪影響を及ぼすのです。太っている人は、身体の中で常に炎症が起きている状態であるとも言えます」