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「熱すぎる食事はがんを招く」は本当か…専門家の見解

ほどほどの熱さがよいようで

食道がんリスクが8倍に

「熱い飲み物や食べ物は冷ましてから食べたほうが良い」

江戸時代の儒学者・貝原益軒は、長生きのススメとして説いた『養生訓』のなかでこんな言葉を残している。

寒い年末年始は、家族や親戚とアツアツの鍋を囲んで、これまたチンチンにした熱燗をクイッといきたい。この瞬間がたまらないという方も多いだろう。

また、普段から熱いお茶が好きで、味噌汁もアツアツで飲んでいるという人も少なくない。だが、じつはこの行為が「がん」を誘発していたとしたら……。

国立がん研究センターで、社会と健康研究センター長を務める津金昌一郎氏が解説する。

「温かい食事は何の問題もありませんが『熱い食事』には注意が必要です。なぜなら、熱い飲食物を熱いままの状態で食べると、食道がんのリスクを『ほぼ確実』に上げると言われているからです。

実際、日本で行われた調査では、熱い飲食物を好む人、よく摂る人が食道がんになりやすいというデータが複数あります。

また、食道がんの人とそうではない人に、過去の食習慣として熱い食べ物を好むかと聞くと、やはり食道がんの人のほうに、熱い物を好む人が多い傾向がありました」

その証拠にイランで約5万人を対象にした調査でも、ぬるいお茶を飲んでいる人に比べ、とても熱いお茶を飲んでいる人のほうが、食道がんのリスクが「約8倍」高かったとの結果が出ている。

また、昔からウルグアイやブラジルの南部では頭頚部がんや食道がんの患者が多く、その理由は熱いマテ茶を飲む習慣が関係しているとされてきた。

「日本でも、和歌山県と奈良県に食道がん患者が多いのは、熱い茶粥を食べる習慣に関係しているのではないかと言われていました。

実際、ラットを使った動物実験では、発がん性物質と共に65~70度のお湯を投与すると、がんができやすくなるという結果が出ています」(津金氏)

 

しかし、なぜ熱い物を好む人は食道がんになりやすいのか。それはのどや食道の粘膜に「炎症」が起こっているからだ。津金氏が言う。

「熱い物が好きな人は、口の中やのどに『火傷』を起こしているのと同じです。火傷=炎症が起こると、細胞の再生が行われますが、その過程において、細胞が突然変異を起こし、がんに変化すると考えられています。

当然、細胞の再生回数が増えれば増えるほど、がん化が起こりやすくなります。熱い物を食べ過ぎると、口腔、咽頭、食道のがんのリスクが上がるのはそのためです」

日本には「のど元過ぎれば熱さ忘れる」ということわざがあるが、本人は忘れても、アツアツを食べたダメージは確実に身体を蝕んでいく。

「熱い物を食べたくらいで、そんな大げさな」と思うかもしれないが、小さい頃から熱い物を好んで摂ってきた人は、食道が幾度となく火傷という炎症を繰り返していると言える。

アツアツの物を口にするのはわかりやすい例だが、じつは、人間の体内では常にどこかで「炎症」が発生していることをご存知だろうか。