「夫婦の愛」を皆が恨み始めた…ドラマで振り返る2018年の日本

そして、2019年期待のドラマ
堀井 憲一郎 プロフィール

「夫婦を中心とした家族」が恨まれ始めた

夫婦ものドラマもいくつかあった。中谷美紀の『あなたには帰る家がある』、中山美穂の『黄昏流星群』、仲里依紗の『ホリデイラブ』など、本来は「恋愛の一種である不倫」を描いているはずなのに、どこか「怨念と執着」を描くのがメインになっているようにおもう。

どうも、むかしから日本に存在していた「夫婦の愛」や「夫婦を中心とした家族」というものを、みんなが強く恨み始めてるのではないか、とおもわせる作品が並ぶ。おもしろいっちゃおもしろいが、正面から見続けると、つらい。夫婦や昔ながらの家族が、破壊される対象として登場してくるからだ。

それが2010年代後半のわれわれの社会の現実なのだろう。そこにこだわってそういう歪みを描くクリエイターはすごいとおもうが、そういう作品ばかり正面向かって付き合ってしまうと、たぶんいろいろよすり減っていきそうだ。かつての日本社会のスタイルが、いまの現実と合わなくなっている、ということが「夫婦のドラマ」では繰り返し示されていた。
 
少し毛色が違ったけれど新しく面白かったのが、ツッパリ学園ドラマ、賀来賢人と伊藤健太郎の『今日から俺は!!』だった。バカな高校生のバカなやりとりが痛快で、ただただおもしろかった。時代設定は昭和だったから、一種の時代劇である。「昭和が舞台の新時代劇ドラマ」というジャンルがもうすこし広がるとおもしろいとおもう。

獣になれない私たち』は、恋愛ドラマや若者の群衆劇ぽさがあったけれど、そういう部分はあまり刺さってこず、主演の新垣結衣の「ふわっとした感じ」だけが感触として残っている。感触だけ残すドラマというのも、あまりなくて、ちょっとすごい。まあ、新垣結衣の存在感ということなんだけれど。

働く女性のつらさを描いているのに、彼女はあまり感情的にならないという描写によって、「働く女性の物語」さえも越えてしまった、という感じである。観音さまの心情を見せてもらったというような感じがする(観音さまって、文字通りの、あの、仏教の観世音菩薩さまってことです)。

期待の女優は誰か

明確な昭和時代劇だったのが『この世界の片隅に』で、戦争中の夫婦を描いていた。このドラマの松本穂香の上目遣いの視線が忘れられない。

というわけで2018年のドラマ女優として、とても印象深かったのは、綾瀬はるか、石原ひとみ、戸田恵梨香となる。

有村架純と新垣結衣の「癒される存在」としての存在感もすごかった。

そうだ、長澤まさみは、『コンフィデンスマンJP』で主演して、コメディエンヌを突き抜けてコント役者のような活躍を見せていて、あれはあれですごかった(毎週、手の込んだコントに見えるドラマというのもすごいドラマだった)。