「夫婦の愛」を皆が恨み始めた…ドラマで振り返る2018年の日本

そして、2019年期待のドラマ
堀井 憲一郎 プロフィール

やっぱりすごかった『おっさんずラブ』

2018年の「恋愛」ドラマとして、衝撃的で、もっとも受けていたのは『おっさんずラブ』だろう。田中圭はけっこう流されていくタイプの男性役で(そういえば『獣になれない私たち』でも似たような役だった)、そこに林遣都と吉田鋼太郎とが絡んだ「男同士の恋愛関係」がコミカルに描かれていた。見ていてただただ楽しかった。

もともと「ボーイズラブ(BL)」という漫画分野が成り立ったのは「恋愛における人間関係とエロティシズムを純粋に楽しみたい」という女子の(腐女子の)強い願望によるものだとおもう(恋愛から男の性欲を排除したいという意志が基本にある)。

男同士の恋愛に特化したほうが恋愛物語を純粋に楽しめるという女性の鋭い判断で始まった分野である。その精神が貫かれた作品が多く出回り、また広く認知され、テレビドラマでも展開できるようになった、ということだろう。

本来のBLは「エロを楽しみたい」という欲望も強いとおもうが(細分化されているのでそれも分野によってかなり違うのだが)、そこはあまり強調されず「軽く楽しい」ドラマに仕上げてあった。その塩梅がよかった。

キャスティングと、ストーリー展開もまた見事だった。これを2018年の一番のドラマと評価する向きも多い。たしかに、ひとつの画期であった。

 

「恋愛のドラマ」は形を変えれば、まだまだ受け入れられるのだ、ということが確認されたともいえる。とはいえ、このあとも次々と男同士の恋愛を前に出してきても、そうそううまくいくわけではないだろうから、いくつか失敗を繰り返せば(失敗作を見るのはそれはそれで楽しいから)、まったく違うレベルの恋愛ドラマがまた出現する可能性が増えるわけで、そういう道筋を開いたというところで、やはり高く評価すべきドラマだとおもう。

『アンナチュラル』の素晴らしさ

そして、2018年に視聴率を取っていたのは、やはり「1話ずつに事件が解決していくもの」である。

松本潤の『99.9』、米倉涼子の『リーガルV』、木村拓哉の『BG(ボディガード)』、二宮和也の『ブラックペアン』など。医療もの、法廷もの、事件ものである。みんなきちんとおもしろかった。それなりに。

なかで心引かれたのは石原さとみの『アンナチュラル』である。

視聴率もそこそこ取り、内容はドラマ好きから高く評価された。

遺体解剖から事件の解決の糸口をつかむという、かなりよく見る設定のドラマだったのだけれど、その見慣れた状況ながら新しさを感じさせたから、高く評価されたのだ。

1話完結であり、また全編を通した謎も設定されていて、これまたおなじみの手法なのだが、それらを描きつつ、仲間たちのやりとりがじつに見事に楽しく、それぞれのキャラクターがとにかく新鮮に感じられた。

それは毎回のゲストにも感じられ、視聴者の予想を「少しずつ裏切っていく」というものだった。この案配が絶妙だったのだ。言葉が過剰な役を演じると石原さとみはとても魅力的である。『アンナチュラル』は2018年の大きな収穫であった。