国連も問題視する「組み体操」が、それでも巨大化しているナゾ

立派な教育活動、なんですか…?
内田 良 プロフィール

一部の地域で再び巨大化

今日では巨大な技を披露しても、学校がそれをウェブサイトに公開することは稀である。学校もさすがにそのあたりのリスク・マネジメントはできている。

だが、運動会に来た卒業生や保護者などがSNSにその写真や動画をアップロードする。そのおかげで、ごく断片的ではあるが、巨大なピラミッドやタワーにこだわっている学校の存在をつかむことができる。

 

今年度の春、ある関西圏の公立中学校の体育祭で9段ピラミッドが披露されたことを私はツイッターとインスタグラムで知って、かなり脱力した。そして今月に入って、兵庫県教育委員会が公開した資料はまさにそれを裏付けるものであった。

兵庫県(神戸市は除く)の公立小中学校において、2018年度はピラミッドの最高段数は小学校で7段であり、その実施校数は昨年度の9校から12校に増えている。中学校の最高段数は9段で、昨年度は0校だったが、今年度は1校がそれを披露した(なお、私がツイッターとインスタグラムで見つけた9段ピラミッドは兵庫県のものではない)。

兵庫県は全国でもっとも組み体操が盛んな地域として知られている。大阪経済大学の西山豊教授が日本スポーツ振興センター提供のデータをもとに分析した資料によると、兵庫県は日本でもっとも組み体操による負傷事故数とその事故率が高い。

その多発する事故を受けて、兵庫県教育委員会は2015年度より独自に詳細な事故状況を調査・公表している。

兵庫県教育委員会の資料をもとに作成

兵庫県の資料には、前年度に比べて段数を上げた学校と下げた学校それぞれの学校の数(段数の大きさは関係ない)が記載されている。過年度の調査資料も参照したうえでその推移を整理してみると、ピラミッドやタワーの段数を上げる傾向が強まっていることがわかる。小学校と中学校のいずれにおいても、ピラミッドとタワーの両者で、前年度よりも段数を上げたという学校の数が、2016年度から2018年度にかけて増加している。

事故の潜在的なリスクは減っていない


ただし、「組み体操事故137件減、兵庫県教委」と報道されているように、段数が高くなったからと言って、それに比例して単純に事故件数が増えているわけではない。その点では、全面的に非難することはまちがえているのかもしれない。

事故率(事故件数/実施校数)の推移(兵庫県)

兵庫県の資料からは、事故件数を実施校数で割った事故率が算出できる(学校数よりも子ども数で割るべきなのだが、その値は公表されていない)。その数値を見ても、事故率の変化に法則性を見出すのは難しい。

しかしながら重要なことは、巨大化するほど事故の潜在的なリスクは確実に高くなるということである。

人を積み上げればそれだけ不安定さは増大するし、崩壊時の衝撃も大きくなる。巨大組み体操崩壊の怖さは,大阪府八尾市立の中学校で2015年9月に起きた10段ピラミッド崩落事故の動画から明らかである。