消えたのはネズミだけではなかった…豊洲新市場「閑散」のワケ

働く人たちの声を拾った
川本 大吾 プロフィール

市場長が語る「開放」とはいかない事情

こうした年末の風物詩とも言える築地の状況から、豊洲では逆に閑散とした売り場の印象が強かった。

物足りなさを覚えることから、水産仲卸業者で組織する東京魚市場卸協同組合(東卸)の早山豊理事長は「一般客の仲卸での買い物は築地で当たり前のように行われいたことであり、豊洲に移転してダメというのはおかしい」と憤りを隠せない。

その上で「(仲卸売場を)ただ見るだけというのではなく、魚を買いに来る人でさえ拒否することはない」(早山理事長)と話し、一般客の受け入れを求めている。

ただ、簡単に開放するわけにはいかない事情もある。

 

「関係者以外立入禁止」を解除し、警備員が一般客の進入を認めた場合、多くの人が仲卸売場へ足を運ぶことになるが、それで影響を受けるのがすし店などの料理店や、鮮魚店など、魚を仕入れにやって来る買出人。

一般客が大勢入れば、仕事の妨げになるのは目に見えているため、受け入れには否定的な見方が多い。

さらに豊洲では、開場直後に小型運搬車「ターレ」の事故が発生しているだけに、管理上の問題も見逃せない。築地でも時折、事故が起こっていたといい、一般客の安全確保などリスク管理を含めた対応も必要にならざるを得ない。

こうした中、市場開設者・東京都の田中賢也築地市場長は「立体構造となっている豊洲市場の利用については、開場前に行った業界との協議で、一般客の受け入れは飲食エリアなどに限って、市場関係者とは分けるべきということだった。仮に仲卸売場の開放が業界の総意なら考えるが、一般客の安全面などの問題があるため簡単には受け入れられない」と話し、「築地のようにはいかない」といった考えを示している。

豊洲には外国人の団体客も多いことから、仲卸売場の全面開放は、大きな混乱が予想される。

豊洲のマグロ豊洲市場のマグロ卸売場(水産卸売場棟)

かつての土壌汚染問題による混迷から、大きく方向修正し、順調なスタートを切った豊洲市場。注目を集めた今年の初競りでは、青森県大間産のクロマグロに3億3360万円という築地でも見られなかった史上最高値が付き、幸先の良い取引となった。

1月15日からは、専用デッキでマグロの競り見学も開始され、来場する外国人を含めた観光客はいっそう増えそうだ。地元の江東区からも、豊洲で一般客が魚を買えるよう求める声が出ている。

築地のようにはいかないまでも、競りを見てすしを食べるだけでなく、豊洲市場で安心して一般客が魚を買えるようにすることも考えるべきではないだろうか。