消えたのはネズミだけではなかった…豊洲新市場「閑散」のワケ

働く人たちの声を拾った
川本 大吾 プロフィール

素人向けもバカにならない

卸売りが原則の築地市場・仲卸売場で、一般客の買い物が常態化していた理由は、売り場への「入りやすさ」だけではない。

そもそも、業務用の仕入れと一般客の「おかず」用の買い物との区別が、売り買いの段階で付けにくいのだ。ベテラン仲卸によると「頻繁に仕入れに来る人なら別だが、たまに来て現金で魚を買っていく人であれば、必ずしも店の仕入れかどうかは分からない」と打ち明ける。

さらにバブル期以降、特に水産物消費は全般に下降傾向。仲卸は「それまで大量に仕入れていた店でさえ買う量が少なくなり、小さな店では魚を数匹。それもさばいてほしいと頼まれ、販売することも珍しくない」という。業務用だからといって、たくさん魚を買っていくわけではなくなっていた。

さらに仲卸は「いかにも素人という人はさすがにこちらでも分かるが、不況の中、少なからず魚を買っていくわけだから、売らないわけにはいかない」というわけだ。

「年末には大量購入する一般客もいたため、次第に多くの仲卸が業務用以外の売り上げを期待するようになっていった」(仲卸)。

業務用取引の低迷による築地仲卸の窮状を反映し、かつて1000を大きく上回っていた業者数は減少の一途。豊洲への移転で初めて500業者を割り込み、492業者となった。

都のまとめによると、仲卸の3分の1以上が赤字経営を余儀なくされており、好転の兆しが見えにくくなっている。

 

経営難が続く中、何とか売り上げを伸ばそうとしていたところに、一般客が築地で大挙して押し寄せてきたわけだから、仲卸も放っておく手はない。

築地場外市場築地の場外市場もかつては人であふれていた Photo by Getty Images

仲卸の店先では数百ある水産物の中から、マグロやアジ、サバなどの大衆魚、さらにタコやウナギ、フグなど、得意な種類を中心に品ぞろえし、料理店や鮮魚店といった業務用の仕入れに備えている。生魚だけでなく、冷凍魚やアジの開き、イカの塩辛などの加工品を専門に扱う仲卸店も少なくない。

ところが年末になると、築地ではどこも見分けが付かないほどに普段とは違った水産物が店頭に並んでいた。年末年始に需要が高まるカニやイクラ、カズノコ、かまぼこなど、一般客を意識した店先に様変わりするのだ。

マグロなどはすし店向けのまとまった単位で販売するのに加え、さく取りされたパック売りなども多くの店が用意していたため、キョロキョロする一般客の目を引き付けていた。