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親も社会も理解がなくて...ある中国人トランスジェンダーの告白

「いつか普通に戻る」と言われた悲しみ

われわれの社会におけるLGBTの割合は、統計方法にもよるが、各国で2〜8%程度といわれている(日本の場合、2015年に電通ダイバーシティ・ラボがおこなった調査「LGBT調査2015」では7.6%という数字が出ている)。

中国の場合も、ネットメディア『網易』など同国内の各報道をみていると、人口におけるLGBTの割合は5%程度とされることが多い。割合としては他国とそう変わらないのだが、なにぶん母数が大きいので、人数は7000万人規模とも見られる。数の面から言うなら、中国は世界最大のLGBT大国なのだ。

だが、中国の社会においてLGBTへの理解が進んでいるとは言えない。同性愛者やトランスジェンダーに対する社会の目は冷たく、その「矯正治療」をうたう病院すら存在するほどだ(そもそも、中国社会にはポリコレ的な考え方があまり浸透しておらず、黒人への差別表現など、他の差別や偏見についてもかなり無自覚な傾向にある)。

加えて社会主義国家である中国には、国民の経済や政治的権利だけではなく「生殖」も権力によって人為的にコントロールされるべきであるという統治思想が存在している(夫婦の出産人数というプライベートライフスタイルに枷をはめる「一人っ子政策〔注.現在は2人まで出産可能〕」も、思想面ではこうした考えに由来する)。

社会主義イデオロギーが強かった時代は同性愛や異性装を退廃的な悪しきブルジョア文化であるとみなす考えも幅を利かせていた。特に同性愛行為は1997年までは刑罰の対象にされていたほどである。

 

トランスジェンダーの中国人に会いに行く

さすがに近年の中国では「生殖」のコントロールという思想はやや弱まったが、社会的に理解が深まっているわけでもない。中国人は家族・一族の付き合いが濃厚なので、LGBTの人にとってはやはり生きづらい社会だろうと思われる。

それでもゲイの場合だと、ネット上にコミュニティが存在するなど、当事者以外の人の目にも見えるほどの存在感はある。だがトランスジェンダーの場合は、声や外見的特徴から比較的わかりやすい人もいるはずにもかかわらず、北京や上海のような大都市でもほぼ姿を見かけない。

そんななか、半年ほど前、ツイッターで在日中国人のトランスジェンダーをたまたま見つけた。中国黒龍江省出身で来日5年目の彼女、サクラさん(仮名27歳、性自認は女性)は、西日本の某都市に留学中、とのことだった。

※インタビューに応じたサクラさん(仮名)。
服は「サイズが大きいものも見つかりやすいので」ZARAをよく着るとのこと。

2018年12月、筆者は出張で彼女が住む街を訪れる機会があったので、話を聞いてみることにした。