「定年後のお金」の引き出し方を間違った人の奈落

「出口戦略」がもっとも重要!
野尻 哲史 プロフィール

定率引き出しの持つ課題

とはいえ、定率引き出しにも課題はあります。

たとえば、残高が小さくなっていくにつれて同じ引き出し率だと金額がどんどん減っていくことです。引き出し率が同じ4%でも、当初の資産額が3000万円の時は年間120万円の引き出し額ですが、残高が2000万円になった折には年間80万円に、さらに1000万円になれば年間40万円と小さくなります。引き出し期間が長くなればなるほど、こうした懸念が大きくなるのです。

また、インフレ等の要因で同じ引き出し額でさえ十分な生活費をカバーできなくなることも懸念材料です。引き出し額が比較的変化しなくてもインフレが予想される際には、その分の目減りが退職後の生活を厳しくすることになります。インフレ率が高い場合には、一気に保有資産の実質価値が毀損し、生活費の懸念が大きくなることは避けられません。

 

“予”定率引き出し

そうした懸念を払拭する方法として、引き出し比率を徐々に引き上げていく方法もあります。

そもそも定率引き出しの持っている意味は、金融市場の変動に伴って起きる運用資産の変動リスクを引出額の変動を使って抑制することにあります。その点で「率」で考える効用に変わりはないものの、その「率」自体を徐々に引き上げていくという調整を想定するわけです。

もし75歳をゴールとして定率引き出しをするとしたら、残高が徐々に下がっていくなかで、ある程度の引き出し額を確保するためには、インフレも想定して引き出し率そのものをあらかじめ決めたルールで引き上げるという考え方です。初年度が4%だった引き出し率を、2年目は4.1%、3年目は4.2%……と引き上げていくといった方法です。

このように、「率」で考えるものの、その「率」を予め決めておくということで、この方法を「“予”定率引き出し」と呼んでいます。

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それでも気になる引き出し額の変動

たとえ「予定率引き出し」を使っても、運用している金融市場の変動が、引き出し額に大きな影響を与えることは避けられません。先の表を見ていただけば、ポートフォリオBの方の引き出し金額が相対的に少ないですし、またポートフォリオAでもBでも毎年の引き出し額の変動は大きくなっています。

これを避けるためには、リスクの少ない運用を心がけることが必要です。このサンプルとして示した表は違いが大きくわかるように、かなりリスクの大きな運用を行っていることを前提にしています。もっとリスクの小さい運用を行えば、これほどの引き出し額の変動は避けられます。

極論すれば、リスクが限りなくゼロに近い運用、すなわち現金で保有、銀行預金で運用とすれば、この引き出し額の変動はなくなりますが、一方で最初に示した長生きリスクには対応できません。

繰り返しになりますが、退職後のお金との向き合い方は、「いかに運用することと、引き出すことをバランスさえていくかが重要」だということです。

さらに詳しく知りたい方は、拙著『定年後のお金──寿命までに資産切れにならない方法』(講談社+α新書)の第5章を参照してください。
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