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「定年後のお金」の引き出し方を間違った人の奈落

「出口戦略」がもっとも重要!
近刊『定年後のお金』が話題のフィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏が、「老後とお金の新常識」を豊富なアンケート調査データを交えながら教えてくれる本連載。老後資金は「定額引き出し」と「定率引き出し」とで資産寿命がまったく変わってくるといいます。
◆第1回はこちら→『「定年までに老後資産を作り終える」は間違いだった』
◆第2回はこちら→『退職後の生活費を引き下げるオドロキの方法』

時間をかけた「出口戦略」が必須!

最近は「積立投資」の重要性がよく指摘されるようになりました。2014年に少額投資非課税制度(NISA)が導入されて以降、2017年からはiDeCo(個人型確定拠出年金)が公務員や第3号被保険者に広がり、2018年からはつみたてNISAがスタートするなど、積立投資が身近なものになってきているからでしょうか。

しかし、積立投資で作り上げた3000万円の運用資産も、退職金で一括投資した3000万円も、運用の始め方が違っていても運用をしているときは常に明日の相場、10年後の相場、20年後の相場が気にかかるものです。それは、知らないうちに「ある時点で一度に売却すること」を念頭に置いているからではないでしょうか。

 

ところで、コラムの第2回では、60歳以降に「使いながら運用する」時代を考えるお金との向き合い方を紹介しました。この「使いながら運用する」時代は、見方を変えると、資産を取り崩しながら残りを運用し続けるということで、それまで続けてきた資産運用からの撤退=出口戦略を行っている時代でもあります。

もし、売却も積立同様に少しずつ時間をかけて行っていくとすれば、相場の急落もそれほど重い負担にならないはずです。コツコツと取り崩すという、投資からの撤退=出口戦略を実践する時代として「使いながら運用する時代」を考えればいいのです。そして徐々に投資から撤退をしていると思えば、無理な投資をすることが必要ないこともわかります。

長生きリスク

そこで、資産からの資金の引き出し方を整理してみたいと思います。「引き出し方に何かコツがあるのか?」と不思議に思う方もいらっしゃるかも知れませんが、意外に難しく、しっかり理解しないと思わぬ大きなリスクが潜んでいるものです。

一般には「年金以外に毎月10万円あれば生活が助かる」といったように、生活の必要性から計算した一定額の引出額を想定することが多いものです。これを「定額引き出し」と呼びます。資産を使うということを前面にして考えれば、「定額引き出し」には、引出額に上限を決めることで無駄使いを抑制する効果があるでしょう。

でもその一方で、2つの課題も内包しています。

1つ目は、思った以上に長生きした場合には、資産が途中で枯渇することになる点です。よく言われる「長生きリスク」です。たとえば、2000万円の資産を毎年100万円ずつ引き出せば、20年間は大丈夫ですが、それよりも長生きした場合には資産が足りなくなります。