退職後の生活費を引き下げるオドロキの方法

3つの対策で必要資金を低減させよう
野尻 哲史 プロフィール

運用、勤労、地方移住の包括的アプローチ

でももう少しお付き合いください。これを引き下げ、準備できる考え方を整理していきます。

この対策として、まず考えたいのが生活費の引き下げです。節約は必要ですが、それによって生活水準そのものを引き下げては意味がありませんから、生活水準を引き下げず、生活「費」水準を引き下げることが大切になります。

米国のように退職後に暮らす場所を選ぶこと、すなわち、日本なら地方都市移住が真剣に検討される時期に来ているように思います。生活水準を引き下げず、生活費水準だけを引き下げた結果、「目標代替率」が60%になれば計算上、必要総額は2100万円減ることになります(=600万円×<70%-60%>×35年)。

また、退職後の生活年数の引き下げも重要です。寿命は変えられませんが、退職年齢を遅らせることは可能です。たとえば60~65歳の5年間、資産に手を付けず、働いて得た収入だけで何とか生活できるようにすると考えると、計算上さらに必要額を1800万円減らすことができます(=600万円×60%×5年)。

 

生活費の引き下げと退職後に働くことを少しずつ織り交ぜて、なんとか2000万円の削減ができたとすると、自助努力の総額は4000万円程度にまで引き下げることができます。

ここで第1回のコラムでまとめた、「逆算の資産準備」の考え方を思い出してください。引き出し総額が4000万円程度になる計画として、60歳時点で2800万円程度あれば、75歳までの15年間に残高の4%を引き出し、残りを3%で運用する「使いながら運用する」時代を想定すると、75歳時点で2400万円くらいが残ります。ここから95歳までの20年間に月額10万円の定額引出を想定すると、95歳で資産がちょうどなくなることになります。

地方都市への移住で生活費を削減すること、長く働くこと、そして「使いながら運用する」時代を想定して退職後も運用を継続すること、この3つのあわせ技で6000万円といった大きな金額も何とか手の届く範囲に見定めることができるはずです。

地方移住は田舎暮らしではない

ところで、地方都市移住と長く働くと言う対策にもちょっとした工夫が必要ですので、これをご紹介します。

これまで退職後の移住先として話題になるのは海外でしたが、終の棲家として考えると必ずしも一般的な選択肢ではなさそうです。同様の移住先が日本にあれば、なにも海外に向かう必要もなく、国内での地方移住が有用な選択肢になるはずです。

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地方移住と聞くと、多くの人が「山辺の一軒家を買って」とか、「ログハウスを建てて」といったことを想像しがちですが、地方の大都市に移住することでも退職後の生活費総額を引き下げる効果がかなりあります。

①消費者物価の安い地方都市
消費者物価地域差指数(家賃を除く総合指数)で東京23区内よりも高い大都市は相模原市、横浜市、川崎市だけ。低い方から20の県庁所在都市を見ると、物価指数で東京23区に比べて3.4%以上低いことがわかります。家賃は更に安いもので、東京都区部を100とすると50%以下の水準が30都市を超えます。

②大きすぎない都市
退職後の生活で利用できる範囲内に必要なサービスが揃うためには都市は大きすぎない方がよく、その一方で小さ過ぎて娯楽や文化施設が整わないといった課題のない規模が必要です。人口50万人程度が住みやすいのではないかと思います。

③コンパクトな都市
退職後の生活に利用できる生活範囲はそれほど広くないことから、都市がコンパクトである必要性も高いところです。その指標として人口密度で1平方キロメートル1000人以上の都市を選んでみました。

これらの条件で絞りこんだ都市は、前橋市、岐阜市、奈良市、松山市の4つになります。