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退職後の生活費を引き下げるオドロキの方法

3つの対策で必要資金を低減させよう

近著『定年後のお金』が話題のフィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏が、「老後とお金の新常識」を豊富なアンケート調査データを交えながら教えてくれる本連載。老後のお金は、「生活資金の引き下げ」が資産を長持ちさせるための必須になるということですが……。(第1回はこちら

想像以上に生活資金が必要な退職後の生活

「退職後の生活に1億円以上」といった煽る見出しが雑誌によく載っています。これって本当でしょうか? このコラムで、一緒に考えていくことにしましょう。

退職したからといって、それまでの生活水準を引き下げることは簡単ではありませんから、退職後の生活は退職直前の年収に規定されるということは、米国や英国ではよく言われることです。日本でも、フィデリティ退職・投資教育研究所が勤労者3万人に聞いた調査では、年収が高い人ほど多くの老後の生活資金が必要だと回答しており、同様の傾向があります。

もちろん退職してしまえば資産形成はいらなくなりますし、課税所得も減りますから支払う税金も減るため、年間必要生活費はそれだけでも減少します。

 

しかし退職直前年収に対する退職後の年間必要生活費の比率である「目標代替率」は、米国では70~85%、英国では3分の2といわれ、決して少なくありません。

フィデリティ退職・投資教育研究所が試算した日本の数値は、2014年の全国消費実態調査では72%でしたから、ほぼ7割といったところでしょう。たとえば退職直前年収600万円の家計なら420万円程度が退職後に毎年必要だという計算です。

ちなみに、これに退職後の生活年数を掛ければ、退職後の生活必要総額が算出できます。退職後の生活を60歳から95歳までの35年間と想定すれば、退職後の生活必要総額は1億4700万円となります。

やはり生活には1億円以上かかりそうですね。

公的年金の力を侮らない

でも、この金額はあくまで必要資金の総額です。これを目標にしてはいけません。さらに、この金額を運用だけで賄おうと考えることも避けなければなりません。

まずは、その原資として公的年金を想定してください。公的年金として月額平均24万円を受けとれると想定すれば、受給開始の65歳から95歳までの30年間で8640万円の総額となります。これを生活必要総額から差し引くことが大切です。差額の6060万円が自助努力で賄う金額だと考えればいいわけです。

それでも大きな金額ですし、ほとんどの方から「こんな金額持っているわけない!」とお叱りをいただくはずです。