「定年までに老後資産を作り終える」は間違いだった

「長い老後」は逆算で考える
野尻 哲史 プロフィール

平均余命で退職後の生活を想定していいのか

まず、リタイアメント・プランを立てる時に「平均余命」を使っていませんか。これはかなり楽観的な計画を立てることになりかねませんので注意が必要です。

60歳の方の「平均余命」は大まかに言って、毎年の死亡率を使って60歳100人が50人に減るまでの年数を計算するのと同じです。言い換えれば“生存確率50%の年齢”を推計するものです。「その年齢より長生きする人が半分いる」という前提で計画を立てると、「半分の人が資金不足になる計画」ともいえます。

これはかなり楽観的な、いえ危険な計画といえます。せめて、「20%くらいの生存確率で計画を立て」、「それよりも早く人生を終えれば財産は子ども世代に残す」と考えるほうが、より合理的でより保守的だと思います。

ちなみに、20%生存確率だと、60代の男性で91歳、女性で96歳ですから、夫婦で95歳くらいまでを想定してはどうでしょうか。

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「ゆとりある生活に必要な資金」は一律でいいのか

「老後のゆとりある生活には月三十数万円が必要」とよくいわれます。しかし、誰でも一律の同じ金額が必要というのはちょっと納得できませんね。

フィデリティ退職・投資教育研究所が行ったこれまでのアンケート調査では、「年収が多い人ほど退職後の生活資金が多く必要だ」と考えていることがわかっています。現役時代の年収が退職後の生活必要資金に影響を与えているのです。欧米同様に「退職直前年収を前提に、老後はその何%で生活するか」を知る「目標代替率」の考え方が、日本でもあてはまるはずです。

 

目標代替率は、米国では70~85%と指摘する学術論文や金融機関の分析が最も多いといわれ、英国では政府の諮問機関である年金委員会が3分の2を目安としています。

日本では公の数値を見たことがなく、フィデリティ退職・投資教育研究所が2014年の全国消費実態調査をもとに推計した結果は72%でした。退職後の年間で必要な生活資金額は、退職直前年収の7割前後といった結果です。

決して誰もが一律の金額を必要とする退職後生活ではないはずです。

さらに詳しく知りたい方は、拙著『定年後のお金──寿命までに資産切れにならない方法』(講談社+α新書)の序章、第1章を参照してください。