2019.01.29

失敗を怖れる人間ばかり集まる大企業にイノベーションはできるのか?

入山章栄が語るイノベーティブ人材論
入山 章栄 プロフィール

「チャラ男」と「チャラ子」の創造力

もうひとつ、イノベーション人材の特徴について述べたい。

ソーシャルネットワークの分野では、人と人とのつながりを解析して、どのような人脈を持つ人がパフォーマンスを上げるかについて研究されている。

そのなかで最もよく知られている考え方が、スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッターが1973年に発表した論文「The strength of weak ties=弱い紐帯の強み」だ。家族や親友といった「強い結びつき」と、ただの知り合いどうしでつくられる「弱い結びつき」では、どちらのほうが価値のある情報が伝わるのか。一見、親友のほうだと思われるが、実はそうとは限らない。

親友をつくるのは容易ではないが、「弱い結びつき」はごく簡単につくることができる。だから「弱い結びつき」のほうが遠くに伸びやすい。遠くに伸びれば、そこには自分が知らない多様な知見や考えや経験を持った人がいて、そういう人たちが発信する情報は「弱い結びつき」のほうが多く流れる。

私が先ほどから述べている「知の探索」に向いているのは、この「弱い結びつき」なのだ。したがって「弱い結びつき」をたくさん持っている人のほうがクリエイティブであるということが、多くの研究で示されている。

 

これがどんな人かを一言でいうなら、「チャラ男」と「チャラ子」だ。チャラい奴はたいてい大企業では疎まれる。普段は人脈づくりと称してあちこちの呑み会に顔を出し、名刺コレクターと呼ばれて普段はバカにされている。

しかしいざ会議をやってみると、意外とチャラ男がだれも思いつかないような斬新な視点から画期的な提案をしたりする。そうして部長から「お、チャラ男、やるじゃん!」などと褒められてますます周りから疎まれるわけなのだが、こうしたことが起きるのは、かれらが「弱い結びつき」を持っているからなのだ。

イノベーションを生む「ONE JAPAN」に注目

そしてこう考えると、「ONE JAPAN」のさらなる重要性がわかるだろう。そう、「ONE JAPAN」こそが、まさに「弱い結びつき」を作れる場なのである。残念ながら、人を企業内・事業部内で抱え込む傾向のある日本の大企業では、人は他企業の人たちと弱い結びつきを作ることが難しい。

そこで「ONE JAPAN」のような、企業の垣根を超えて人と人が繋がるプラットホームがあれば、それは知の探索になるのである。そして、それは個人内の多様性を高めるだろう。

世間には、ONE JAPANを「大企業の若手の仲良しクラブ・交流会」と批判する人もいる。しかし、私に言わせれば、その企業の垣根を超えた交流会こそがまずは重要なのだ。「ONE JAPAN」は人と人が繋がる場だ。ここで多くの今まで知りえなかった多様な人と弱い結びつきを作るはずだ。それ自体に、大きな意味があるのである。

では、ここまで見てきたようなイノベーション人材になるにはどうすればいいだろか。それは別に難しいことではない。まずとにかく「動く」。これしかない。「ONE JAPAN」をその動くきっかけとしてぜひ使って欲しい。

これから日本のビジネスは徐々に「プロジェクト型」に移行していくことになるだろう。個人が自らの中に多様性を持ち、自分らしさが発揮できる機会を求めて「弱い結びつき」の中で多様な人材とプロジェクトごとにつながり、自分が納得できる仕事だけをする。そういう時代が近い将来必ずやってくる。

そうなると、その人にとって企業とは、単なる自分が所属する組織なのではなく、自分らしさを発揮して、自分の作りたい世界を作り、自分がしたいことをするための道具になるだろう。

日本の大企業で働く社員たちにそうした意識が芽生えてきているのは、ここで紹介した「ONE JAPAN」が発足2年で50社1200人も参加するほどのコミュニティになったことが、何よりの証左だろう。イノベーションを生む芽は確実に育ちつつあることを私は実感している。

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