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仏独首脳がダボス会議を欠席してまで「熱い抱擁」を交わしたワケ

なぜ、いま、「仏独友好条約」なのか

「アーヘン条約」とは何か

世界の政府首脳や大物政治家、巨大企業のボス、影響力の大きい市民団体の代表など3000人もが集まる世界経済フォーラム、通称「ダボス会議」が22日より始まった。ここで、世界経済の方向が決まるとも言われる。

しかし、今年は大物政治家の欠席が多い。Brexitで混乱中のイギリスのメイ首相も、メキシコの壁の予算問題を抱えているトランプ大統領も、オーストリアのクルツ首相も、ロシアのプーチン大統領も、インドのモディ首相も来ない。

ちなみにトランプ大統領は、去年は出席してスピーチをしたら、「協調の場にふさわしくなかった」と悪口を叩かれ、今年は欠席だと、「国内の問題も片付けられないのだから、おめおめと来られないだろう」とまた雑言。ドイツの主要メディアはトランプ大統領が大嫌いだ。もし、急に飛び入りで参加したりすれば、今度は何と書かれるやら。

 

フランスのマクロン大統領も欠席とか。そういえば、去年のマクロン氏はダボス会議のスーパースターだった。お隣なのに来られないとは、よほど黄色いベスト運動が効いているのか……と、そんなことを考えながら、初日のニュースを見てびっくり。皆が続々とダボスに集合していたそのとき、マクロン氏とメルケル首相は、ドイツのアーヘン市で熱い抱擁を交わしていた。

二人は新しい仏独友好条約に調印し、両国の関係をさらに深化させようと固く誓い合っていたのだ。

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ちょうど56年前の同じ日、ド・ゴール仏大統領とアデナウアー独首相が、仏独協力条約に調印した。調印場所がパリのエリゼ宮だったので、「エリゼ条約」と呼ばれる。有史以来、ずっと憎み合っていたと言ってもよい両国が、隣国として仲良くしようという意思を初めて示した画期的な条約だ。

今回、調印されたのは、その改訂版、「アーヘン条約」である。

条約の狙いは、関係を深化させたドイツとフランスがEUを牽引、さらに発展させていこうというもの。調印後、「独仏の発するシグナルを、多くの機関が待ち望んでいる」(メルケル)とか、「独仏関係は歴史的な奇跡」、「あちこちで台頭している国家主義勢力と対決するために大きな意味がある」(マクロン)など熱い言葉が飛び交った。

ただ、国民にとっては寝耳に水。事前に、この条約について国民の意見を聞くという試みがなされたわけでもない。それでも第1テレビのオンライン・ニュースは、「(こちらは)“自国ファースト”ではなく友好」と、トランプ大統領を皮肉りながら同条約を褒めた。

何とも不自然な友好条約

アーヘン条約で何が強化されたかというと、まずは外交と安全保障。独仏で軍備を統合し、戦力を強化する。外交もなるべく歩調を合わせる。

同条約とは別に、すでにEUでは、EU軍の創設が視野に入っており、また、フランスが国連で持つ安全保障理事会の常任理事国の席をドイツと分け合うことまで検討されているといわれる。

アーヘン条約には、また、経済関係の深化も盛り込まれている。それによれば、10人の経済顧問による審議会を作り、経済政策やそれに関する法律を統一する具体案を協議させる。つまり、EU市場のさらなる統合を目指す。