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L.A.に来て2ヵ月、まさか「ハリウッド」が見つからないなんて

エンターテインメントの街で 第3回
米コロンビア大学を卒業後、現在、株式会社CTBの代表を務める筆者は今年、アメリカのエンターテインメント産業で仕事を作るべく、ロサンゼルスに拠点を移した。そこで目にしたさまざまな光景を伝える新シリーズ。第3回目は映画中心地「ハリウッド」の“場所”について――。

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アーツ・ディストリクトの一角で

どこまで運転しても路上生活者のテント村が続くから、訪問先の会社から送られてきたダウンタウン・ロサンゼルスの地図を再び確認する。

昨年創業して以来注目を集めているハリウッドの新興企業のオフィスは、いったいどこにあるのか。明らかに再開発から取り残されてしまったこの場所で、本当にハリウッド映画が作られているのだろうか?

そういった疑問は、地図に記された通り左折するとたちまち払拭される。道一本を境に路上生活者のテント村は消え去り、かつて倉庫や工場として使われた建物が次々にギャラリーやオフィスに転用されるロサンゼルスのアーツ・ディストリクトが唐突に姿を現わすからだ。

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衝動的な遊び心を模倣しつつ、あくまで計画的に設計されたシリコンバレーのオフィスを彷彿とさせる受付に到着すると、オレンジ色の壁に設置された巨大モニターに『地獄の黙示録』の戦闘シーンがゼロ音量で映し出されている。

色とりどりの高級家具に加えて、バーカウンターとピンボールマシンまで配置された受付は、創業後まだ一本も作品を作っていない同社が、中国企業から潤沢な出資を取り付けたという世評を裏付けている。かかる出資は、同社の創業チームであり、近年立て続けにヒット映画を手がけた監督と脚本家たちに寄せられた期待の表れだろう。

だがこの日、私は創業チームに会うことを許されていない。紹介の経緯が理想的でないからか、まだ実績のない我々を迎えるのは、創業者の部下たちだ。

無論、彼らにしても長いハリウッドのキャリアの持ち主なのだから、ガラス張りの会議室に通され、デザイナーブランドに身を包んだ二氏と握手を交わすと、自然と期待が高まってくる。

 

ところが、会話が始まり間も無く明らかになるのは、一刻も早く彼らの上司、すなわち創業者への紹介を取り付けることが不可欠なことだ。

なるほど目前の二人の業界知識は豊富であり、日本から来たばかりの我々が知り得ない事柄を次々に教えてくれる。しかし、そうやって二氏が発する言葉の一つひとつが、決して彼ら自身による思考の結果として選択されているものではないことが明白なのだ。

「ネットフリックスやアマゾンが台頭して、テレビの客層が細分化したことによって、以前より多様なテレビシリーズの制作が可能になった」

「#MeTooムーブメントの影響で、強い女性のキャラクターを主人公に据えた作品が求められている」

「超能力ものは需要があるけど、マーベルかDCコミックスの原作がなければ制作が難しいよ」

「テレビシリーズは、とにかくキャラクター重視。主要キャラクターを観客が好きになれば、あとは何シーズンも続けられるからね」