足立区の治安を劇的に良くした「愛錠ロック大作戦」とは何か?

まちを変えた「究極のお節介」
池田 利道 プロフィール

野菜を食べて健康寿命を延ばせ

続く第2弾は、健康寿命の向上に的が絞られる。

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住民の健康づくりは、どの自治体にとっても重点課題だ。その内容も、年齢や生活の実態に応じたきめ細かな健康管理意識の啓発から始まり、生活習慣病の予防、がんをはじめとした重大な疾患の早期発見・早期治療、感染症の予防、心の病対策等々と多岐にわたる。足立区も、かつては総合的、裏を返すと総花的健康対策を行っていた。

しかし、目に見えた成果がなかなか上がりにくいのも、健康対策の課題である。そんな中で足立区は、2012年に健康対策の重点を糖尿病対策に絞り込むという、大きな方向転換に乗り出す。批判を覚悟の上でのチャレンジだった。

区がこうした思い切った決断をした背景には、糖尿病の医療費が他区と比べて高いという実態があった。

東京都の調査によると、2015年5月時点での40歳~74歳の国民健康保険被保険者1人あたりの糖尿病医療費は、23区の平均が942円であるのに対し、足立区は23区最高の1144円。

2016年には1091円に下がり、23区最悪から脱出できたようだが、23区平均(911円)と比べると依然として高い水準にあることに変わりはない。お医者さんにかかった病気の中に占める糖尿病の割合は、いまも足立区が23区で一番高い。

 

糖尿病は症状が進むと様々な合併症を引き起こす。なかでも糖尿病性腎症が進むと人工透析が必要となる。重症化に従って人工透析の頻度も増していく。費用はかかるし、つき添う家族の負担も大きくなる。その一方で、糖尿病は食生活の改善がその予防や症状の悪化抑制に大きな効果をもたらす病気でもある。

ここに注目した足立区が打ち出したのが、「野菜を食べよう、野菜から食べよう」という「あだちベジタベライフプロジェクト」。

足立区の資料(『足立区糖尿病対策アクションプラン 2018年3月改訂版』)によると、2006年~2010年の平均値で、全国トップクラスの平均寿命を誇る長野県の野菜摂取量は1日あたり男性が379g、女性が353gでともに全国最多。国が勧める1日あたり350gを超えている。

若い独身者が多い東京都の平均値は、290~300g。これに比べて足立区民の野菜摂取量は、220~230gときわめて少ない(下図)。それは性・年齢を問わず、足立区に共通した課題となっている。

ベジタベライフプロジェクトは、どうしても外食が多くなりがちな今日の食習慣を考慮して、飲食店にも協力を呼び掛けている。

その結果、「あだちベジタベライフ協力店」に登録している店舗の数は、区内の飲食店(総菜等の販売店を含む)のうち、およそ1割にあたる600店を超えている。牛丼チェーンの店に行っても、ファミリーレストランに入っても、足立では野菜たっぷりメニューが味わえる。

2010年時点で東京都の平均と比べおよそ2歳の差があった足立の健康寿命は、2015年には約1.5歳にまで縮まった。「あだちベジタベライフ」の効果は、着実に現れ出しているといって良さそうだ。