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# 世界経済

IMFと世界銀行の「米中景気減速見通し」に強い違和感を覚えるワケ

両国経済の明暗はハッキリしている

米国と中国の成長率低下懸念

1月21日、IMF(国際通貨基金)が新しい経済見通しを発表した。

公的な国際機関であるIMFの経済見通しというだけでありがたがる市場関係者や識者が随分といるが、筆者の記憶だと、そのパフォーマンスは民間エコノミストと大差ない。どちらかといえば、現状の後追いのような予測であることが多いように思う。

(いまはどうだかわからないが、3~5年前までは筆者がかつて勤務していた外資系証券会社の同僚が責任者になっていて驚いたことがある。ちなみに彼の予測パフォーマンスはここだけの話、決して良くなかった)

それはさておき、このIMFの経済見通しだが、2019年の世界経済の成長率を前年比で3.5%と予想している。2018年実績見通しが同3.7%だったので、2019年の世界景気は前年からわずかに鈍化するという見通しである。

リーマンショック前の2005年から2007年までの成長率はだいたい5%強程度の水準だったが、それが、リーマンショック後には3%台半ば程度まで減速した。今回の予想値はリーマンショック後の平均値に近く、世界経済全体でみても、リーマンショックの後遺症はまだ残っているということではなかろうか。

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そして、国別でみると、アメリカが前年に比べ0.4%ポイント低下の2.5%成長、ユーロ圏が同0.2%ポイント低下の1.6%(内訳ではドイツ、イタリア、スペインがそれぞれ前年から0.2、0.4、0.3%ポイントの成長率低下)、中国は0.4%ポイント低下の6.2%となっている。日本は前回までの見通しが悲観的過ぎたのか上方修正され、2019年は1.1%成長となっている。

今回のIMFの経済見通しは、IMFに先立った発表された世界銀行の経済見通しと内容的にはほぼ同じである。両方の経済見通しの大きな特徴は、米中の経済見通しがかなり悲観的であるという点だ。さらにいえば、米中はともに前年から0.4%ポイントの成長率低下となっているという点だ(世界銀行の中国は0.3%ポイントの成長率低下)。

筆者は米国と中国の成長率の落ち込みが同じような水準であるという予想にはかなりの違和感を持つ。

 

1月21日に発表された2018年第4四半期の中国の実質GDP成長率は前年比で6.4%と、リーマンショック直後のボトム(底)に近い(中国にしては)低成長となった。

一方、米国の方は公式の発表はまだだが、アトランタ連銀が月次指標等から推定している「GDPNow」という「ナウキャスト調査」では、2018年第4四半期の実質GDPは前期比年率換算で2.1%であった。これを前年比に換算しなおすと、3%程度となり、第3四半期とほぼ同水準の成長率となる。現時点では米国経済にはそれほどの減速感はないということになる。

その米国経済だが、昨年12月のISM景気指数(企業の景況観についてのサーベイ調査)が製造業、非製造業ともに11月から大きく低下した上、12月の消費者信頼感指数も同様に大きく低下したことから景気の先行きに対する懸念が強まったが、12月の鉱工業生産指数は前年比4%と堅調を維持しており、実体経済の減速はみられない。

景況観指数や信頼感指数といったセンチメント指数は株価との相関が高いため、株価の大幅な調整が強く影響した可能性が高い。さらにいえば、雇用関連指標も12月は完全失業率が3.9%と上昇したが、非農業部門雇用者数は31万人増加しており、雇用環境も良好である。

(失業率の上昇は、労働市場にかつての「Discouraged Worker」が参入し始めたためであろう)